RYUYA

市子のRYUYAのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.5
同棲3年目の恋人からのプロポーズ翌日にバックれた「市子」という偽名の女の行方とその隠された過去を、時系列を横断しながら追っていく物語。「真相」への観客の求心力に全振りした脚本のリードの取り方(特に時系列の入れ替え)がめちゃくちゃ巧みだった。題材に似合う言葉じゃないかもしれないけど、ものすごくエンターテイメントな作品。市子をはじめ、登場人物ほぼ全員が必ずどこかで感情を爆発させる場面がある中で、宇野祥平さんの寡黙さが強烈に残った。ああいう宇野さん、初めて見た気がする。素晴らしかったです。

若干気になったのは、市子に関わってきた人の名前がチャプター代わりに黒バックに白字で結構な回数出るんすけど、そこ以外も場面転換で黒入れまくってたとこ。終盤とかにそれやられると「終わった?あ、まだか...」ってなっちゃうわ。でまたこれに文句言うと神経質な自分が嫌いになるという...。でもまぁ、肝である「真相」の描写は、邦画があまり越えたがらない一線を越えていた感じがして、強烈でした。「忽然と姿を消す系」の映画って、なんでこんなに魅かれるのか考えた時に、自分の野次馬精神みたいなのが顔を覗かせてゾッとしたけど。この人にどんな不幸があったんだ!?って気になるって、冷静に考えると結構ヤバいもんなぁ...。

怪物、月、福田村事件、正欲、そして市子。今年の良作といわれる邦画を並べると、軒並み暗いな。日本不安なるわ。
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