杉咲花さんが素晴らしかった。
感情に立体感があり胸を打たれた。
市子がきっと小さい頃から親に子守唄のように聞いていた歌が、見終わった後もぐるぐると頭を巡っていて、自分でも口ずさんでいる。
包丁で刺してしまったであろうシーンの時に、色んな感情が溢れて泣きじゃくる市子がとても繊細で素晴らしい。
感情は1カラーではなく、何種類もの色の感情が溢れていて、役者の体の中に市子の感情が埋まっていなければあんな何種類もの感情を表現する演技はできない。
あれは演技ではなく市子そのものだと思った。
戸田監督が杉咲花さんに直接オファーしたくなるのもとても理解できる。
杉咲花さんだけでなく相手役の若葉さんも素晴らしい。
市子の母親に過去の話を聞いたあとの感情を抑えつつも溢れ出るシーンは見ていて心が苦しかった。
ただ市子のことを好きだからいうだけでなく、愛していて過去も今も全てを包み抱きしめたいと思っているのが痛いほどに伝わる。
しかし市子はただ『辛い過去を背負った女性』だけでなく、人の身分証を獲得しようとしたり、助けてくれた同級生も同じく殺してしまったり、自分が生きるために人を殺し続けていることを正当化かしている部分はとても言葉にならない…。
