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市子のKHのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.8
2024年の年間ノルマ70本中16作品目。
見させて頂きました。

最近かなりの邦画強化月間みたいに消化させていただいておりますが、こちらの作品は
チラッと目には入ってましたが、
オススメされなければ見てなかったかと思います。
邦画に強い友人から『見た?』と言われてクリップして速攻で視聴となりました。

また、作品の概要に関しては全く知りません。杉咲花ちゃんが出てるらしいと言う事がジャケットからわかる程度でございます。
そして彼女の演じる役の名前が『市子』という事なんだろうなと言う事が辛うじてわかる程度でございます。

まずは、ネタバレなしの率直な感想をば述べます。

『非常に重たい作品でした。また、ラストの解釈の仕方では作品の内容がかなり変わってくるなと言う印象で、無論その辺は後半のネタバレで語りますが、
個人的に一つの結論の様なモノには辿り着いておりますが、結構な人が違う結論に辿り着く様な気がしてなりません。
それは僕が作品を穿った見方をしてるからだと思うので、ただの妄想として後半も楽しんでいただければと思います。
それにしても本当に日本には優秀な役者が多いなと思います。経験もした事ないはずの役をこうまで演じてしまうのには本当に脱帽です。
中でも僕のお気に入りの若葉竜也君にはとても感情移入してしまいます毎回。
そして今回1番大変な役を務め上げた杉咲花ちゃんもちゃんと演技を見るのは、、
『湯を沸かす〜』以来かもですが、素晴らしい役者ですよね本当に、
という事で、非常にお勧めできる作品です』


そしてここから先はネタバレを含む感想になりますのでまだ見てない方はご注意を、


今回僕が1番引っかかった部分というか、
賛否の分かれる要因になり得るのでは?と感じた部分に、

ラストの、市子の行動にあります。
それは、ラストに市子は北君と市子に自殺の幇助を頼んだ北見と言う女性を殺害している点にあります。

それまで僕は、市子は出生が原因で自我の壊れてしまった不安な女性として見ておりました。
過去に彼女の関わった殺人のケースで言っても正直情状酌量の余地があると言うか、

例えば病気の妹を殺害したケースは、母子共に介護の限界を迎えており、
母親に代わって彼女が手を下したと思っております。

また、渡辺大知扮する小泉を殺害したケースはハッキリ言って衝動的であり、計画的犯行ではない。彼女が仮に無理矢理肉体関係を迫られた事で揉み合いになり、向こうが先に刃物を手にしたから、それを奪おうと思ったら誤って刺してしまったと警察に証言したら、
おそらく大した罪には問われないかと思います。

しかし、第三、第四の殺人に関しては完全に上のどちらでもなく、
自分の利益のためというか、真相を知っている北君を殺し、また、別人として生きるために北見を殺害しています。

僕はそれを踏まえた上で、上の二つの殺人も、もしかしたら違う理由があるのではと考えます。

つまり、僕が言いたいのは、不幸な生い立ちがあったにせよ。市子という女性はそもそも
そういう女性だったのでは?と思うのです。

自分に少しでも利益をもたらす人物と関係を持つ際に、彼女は平気で人を傷つけたり、物を盗んだりしている過去があったことに気がつきました。

梢ちゃんと仲良くなるためにたまごっちを盗んだりしていたり、田中宗介が自分から離れそうになったと感じた時は、自分から肉体関係を迫ろうとしたりしております。
(まぁこれは、そもそも自分から先に離れていった節もあるが、)

また、自分のことを信用して利用できると思った北君に関しては、隠れ蓑に使ったり、
殺人の隠蔽を手伝わせたりしている部分も合わせて考えると、

市子は自身の出生自体を呪っており、また、妹の介護をし続けている事にはもううんざりしている。また、出生届のある妹になり変わる様に母や小泉に育てられた事に対しても
深く恨みを持つ様に育った事には疑いようもありませんが、

それでも彼女が別人としての人生を歩む理由は一体何なんでしょうか?
また、市子が長谷川から逃げる様に去っていったのも少しだけ疑問が残ります。

本来は、発見された妹の白骨死体から身バレを防ぐために逃げたと考えるのが自然ではあります。
また、婚姻届を市子という名前で提出するわけにもいかず、
逃げるという手段を取ったのは何となくわかります。
しかし、元同僚のキキちゃんには自分は人殺しだと告げていたり、元共犯の北君を頼ったりしていることから、
何となく、自分という人間が長谷川の様な真っ当な人間とは関わってはいけないと感じて去ったのではと思います。

つまりは、そもそもが住む世界の違う住人との共同生活が無理だと感じたのかもしれません。
皆さんはどう感じましたか?

また、妹を殺害した直後に母の言った
『ありがとね』というセリフの意味もかなり引っかかりました。

本来であれば、自分の娘に妹を殺す様なことは何があっても避けなければならず、生活に限界が来てるのであれば自らが手を下すところを、わざわざ娘にやらせてしまって、
そんな辛いことをあなたにやらせて

『ごめんね』

と言うはずの場面ではなかっただろうか?
それが、『ありがとう』なのだ。

市子に罪悪感を抱かせないためにそう言ったのでしょうか?ものすごく印象的なセリフだった様に思います。

また、遂にラストまで長谷川と再開することはなく、そのままどこかを別人として歩いている市子のカットでエンディングとなります。
市子の鼻歌は妹を殺害した後に母が歌っていた鼻歌であり、
何の歌かを調べましたよ。
実際に曲も聴きましたが多分これです。

童謡の『にじ』と言う曲みたいです。

虹とはつまり、雨が上がった後に見える物であり、
辛い瞬間、悲しい出来事を仮に『雨』とするならば、

妹を介護しなければならない時間や、そんな妹を殺害しなければならなかった事を、雨として、

それが終われば空にはきっと虹が見えるはずと信じており、

また、北君と下校中にゲリラ豪雨に見舞われた時には
雨宿りする事なく、全部を洗い流せと笑いながら泣いていたのが印象的でした。
彼女はこの雨が上がればきっと自分には良いことが起こるはずだと信じていた。

しかし帰ると小泉が待っており、殺害してしまったので、結果的にはまだ雨の中ではあります。

とまぁ、僕は作品を見ながらこんな結論に至りましたが、これから他の人の感想を見て
飲み込みたいと思います。

今回はこの辺で。。
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