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ある閉ざされた雪の山荘でのKHのレビュー・感想・評価

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
3.7
2024年度年間ノルマ70本中28作品目。
観させて頂きました。

事前情報は全く入れず、終わった後にこの作品が東野圭吾作品なんだと知ったほどで、
とりあえず追加されたらおもろいらしいから見てみようくらいに思っておりました。

また、僕が個人的に知らないだけで世間的にはかなり有名なのでしょうか?
今を代表する若手の役者陣が数多く出演し、
なかなかに層が厚い印象がありました。
が、個人個人の演技をそこまでしっかりと見た経験がないので、そちらも楽しみに見ていきたいと思います。

まずは、ネタバレなしの率直な感想をば述べたいと思います。


『見終わった後に、実によく綺麗にまとまっていたなと感じました。
また、先の読めない展開にも終始ワクワクしながら見れました。時間があっという間に過ぎて行った感じです。
また、役者の演技も良かった様に思います。
一つの家の中のみで構成される物語にしてはスケールの大きな事をやっているなと感じました。
もう少し長めに設定しても良かったかなぁと思います。どうしてもこの短時間で登場人物が7人だと、一人一人の背景が薄くなりがちで、感情移入しづらい場面も多々ありました。
ただ本当にいいお話でした。見終わった後に爽快感が残る様なそんな映画でした。』


後、何故か最後に大塚明夫が出てくるのでは‼︎‼︎⁉︎と期待したのは僕だけではないはず


そしてここからはネタバレありの感想になりますので、まだ見てない方はご注意を、




まず、大前提として語りたいのはこの作品が表と裏が存在しているのかな?と言う結論です。まず表目線はこのペンションで行われたことは事実であり、雅美との過去も全て実際に発生した出来事。
雅美を再び舞台に立たせるために行われた出来事を、実際に舞台にまで昇華したと言う物語と、

このお話は最初から最後まで全部作り物であり、我々がラストに見た演劇の舞台だったと言う結論。
つまりは全てが久我が作り上げたフェイクストーリーであり、役者たちは演技をしていたと言うお話。これが裏の見方です。

また僕がどちらの目線で見てたかと言うと、もちろん皆さんと同じ表目線で見てましたが、
結果としてこの作品は裏なのでは?とも思えてしまったと言うか。
表であれば色々とガバい設定が目に付いたからです。

まずガバい設定として、違和感の残った部分ですが、

今作の主人公ともいうべき、久我が今回のオーデションに起用された意味がイマイチわからなかったです。

今回、過去に事故に遭って半身不随となってしまった元劇団員の雅美の復讐のために本多が計画した実行した物だとするならば、

よそから来た素性のわからん人をこの計画に巻き込む意図がイマイチ不明で、
例えばこれをガチの事件だと思いスマホで外部に連絡もしくは、ドロップアウトを宣言していた場合はどうなってしまったのでしょうか?

結果としてこの事件がそのまま舞台に併用出来たのはまぁ不幸中の幸いとしても、

正直、雅美以外のメンバーには事前に伝えとく方が計画のリアルさが増すというか、成功率が上がる気がしました。

なので、事情を知らない田所や貴子は劇団員のメンバーなのに、雅美が計画に加担している事をいくらフリークとは言え外部の人間に解き明かされてしまうと、なんとなく立つ瀬がなくなってしまった様にも思いました。
というか、後半は空気みたいになってしまって少し残念というか。

全員で、雅美と久我を騙そうとしたけど、久我に謎を解明されてしまった!
とかの方がもっとアリバイが複雑になったりとか、セリフの一個一個に意味を見出せた様な気がします。

田所とかは、何も知らないとは言え、
めちゃめちゃ怖いですからね。普通に女の子の部屋に押し入ってますからね。いくら怪しさをミスリードするためとは言え、

そう思えば、久我が元所属していた劇団の解散話とかてっきり何かのフラグなのかな?と思わせておいて、全然関係なかったんだなぁと少しがっかりしました。関係ないなら
いらないし、

この計画は、劇団員を騙して殺すという目的ではなく、雅美1人だけを騙せば良いのであれば

冒頭に目隠しでバスに乗り、降ろされた直後にバス停に思いっきり地名も書いてある場所で目隠しを外したのも少し意味がわからなかったです。
全員手探りでバスから降りたのでしょうか?
降りた際に『あー、ここは九十九里浜ら辺なのか』とはならなかったのでしょうか?
むしろバス停からペンションまでは別にスマホは使えるので、地図アプリ等で現在地を把握することも可能だし、いらないシーンやなぁ。。

それとも、役になりきるために演出された設定を演じただけなのでしょうか?
あれこそが舞台の仕掛けなのでしょうか?
むしろガバさを演出したのでしょうか?

物凄い気になりました。あんな普通のバスなのに、バスの中にアナウンスで『次は、どこどこー』って言われてボタン押したりしたんでしょうか?
バスに乗り込む際にはどうしたのでしょうか?

また、新進気鋭の劇団員とは言え、あのランクのペンションを数日間貸し切り、
カメラを数十台取り付け、
また、七人分の食材を買い込んだりと涙ぐましい努力は最終的にちゃんと割り勘にしたのかなーとかもうそんなことばっかり気になりました。同じ本を7冊も買ったり、あの本もどれだけの効果を生んだのかもよくわかりません。
特に『ここのシーンとこの時間は酷似している‼︎』とかそういうわけでもないし、
にも関わらず序盤は結構みんなずっと本読んでる描写多かったなーみたいな。

つまりは、表目線で見ると色々とボロが出てくる部分も、これが演劇の一部のシーンと捉えれば、作画的に多少の無理矢理感はまぁ我慢できると言うか。騙すためにやってたのか。と納得はできる。


また、この作品は小説ではなく2時間に満たない映画なので、結果的にラストを見終わった後にこの作品を表で見るか、それとも裏で見るかはあなた次第‼︎とされてしまっているため、

多少なりとも結末に不満の残る人たちはいるかなと思います。
まぁ例えばラストに雅美が車椅子から立ち上がったりでもしてれば、
あー‼︎そうかこれ自体が全部演技だったのか‼︎となったとは思いますが、
真相は闇の中というか、それこそ、ありもしない雪の中の山荘の様に、そうかもしれないけど、そうではないかもしれないを楽しむ作品なのかなと感じました。

僕個人としてはですが、仮に表目線であってもそう言ったガバい部分は修正が効くし、
薄く感じてしまったシーンを改変して、

例えば、誰か1人ペンションの管理人みたいなオーデションを進行する様な人を設定すれば、あんなただの路線バスで来る必要もなく、ワゴン車一台用意すれば目隠しの効果なんかもあるし、

細かな雑務はその人にやらせればもっと役者が料理当番なんか気にせずに、自由に動けたのかなーとか感じてしまいました。

そう言った部分で、各キャラクターの背景をもう少し設定してくれれば、
例えば、田所なんかはもう少し生きたキャラになり得た様に思います。ただの変態チックなモテない人ではなく。まぁ1番印象には残りましたが、西野七瀬とかは逆に空気すぎるというか。。

ただそうは言っても、各々各キャラクターがしっかりと個性は出せていたし、
演技の部分もあるだろうけど、嫌な人間は嫌な人間として映っていた様に思います。

本当にテンポが非常に良くて、
部屋を真上から見たカットなんかは露骨に裏設定を表現しているとも取れるし、良かったと思います。

後一個、なんかオーデションに落ちて実家に帰った雅美の元へ『もう一度帰ってこい』と励ましに行った三人ですが、
僕は個人的にそこまで悪い事をしたのか?
と思ってはおらず、

また、もっと直接的にその三人が雅美を事故に遭わせてしまったのかと思いきや、
単なる離れた場所で彼女に電話で話しているだけで、あそこで温子が『雨宮が事故った』と芝居をしてなかったとしても
事故は起きたのでは?と思ってしまいました。事故を知った雅美が急に道路に飛び出したというわけではなく、
むしろその場で立ち尽くしたところに車が突っ込んできた訳で、
また、それが道のど真ん中という訳でもなかったので、
これで半身不随になった恨みを三人に背負わせて挙句に殺害計画まで立てられるのは
少し逆恨みがすぎるというか、
むしろドライバーを恨みなさいよとは思いました。


物凄い個人的には劇団の監督というか演出家の東郷役として大塚明夫がラストに登場し、
事の顛末を全て事前に本多から聞かされて
それに金も場所も設定も全面協力した上で、
雅美に、『もう一度帰ってこい、這い上がれ』とでも言ってくれれば表設定でも
もっと良いなぁとか思ってしまったというか、
あんなペンションの中の声を大塚さんにするから期待してしまったよ。


とまぁ、色々と言いましたが、時間的な制限があったとは言え、2時間を下回る上映時間の中の割に、目隠しバスとか、井戸とか、料理とか、本読むとことか、ガッツリ削ってもっとキャラの時間を作って、感情移入させて欲しかったなと感じざるを得ないというか、

その辺の少しガバい部分というか、ちょっと変えるだけで違和感がない様には作れるんじゃない?と思ってしまっただけに

ラストの表裏のある結末の設定を理解する前に、変な矛盾を感じ取ってしまって気が逸れてしまった様にも感じましたので、

なんか割と面白かっただけにそう言った部分が気になってしまうのはもはや性格なのでしょうか?でも本当に話はよくできていたなというか、終わった後になるほど東野圭吾だわと思いました。
むしろ小説にはそんな違和感はないのでしょうか?
機会があれば読んでみたいです。

今回はこの辺にします。
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