こなつ

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのこなつのレビュー・感想・評価

4.0
アレクサンダー・ペイン監督の最新作。この監督の「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」がとても好きなのだが、今回も孤独な人々の痛みに寄り添う監督の演出にまたもや感動した。

もう一度クリスマスシーズンに観直したいと思えるような、クリスマスが織り成す奇跡の物語。舞台となったのは、1970年代のマサチューセッツ州郊外にある全寮制寄宿学校。深い雪に覆われた美しい景観と70年代の懐かしい楽曲とともに流れる映像は、何処かノスタルジックな気持ちにさせる。

生真面目で融通が効かず学生や同僚からも嫌われている教師ハナム、母親の再婚で居場所を失った問題児アンガス、ベトナム戦争で息子を亡くして喪失感を抱えている料理長メアリー。それぞれ立場も異なり共通点のない3人が、2週間のクリスマス休暇を一緒に過ごすことになる。3人の過去から現在に向かう姿が丁寧に描かれていてわかり易い。

人は皆、何かしら心に傷を抱えている。その痛みを消すことは難しいけれど、寄り添うことはたとえ家族でなくても出来る。不器用な3人だから最初はぎこちないが、次第にそれぞれ影響されながら距離を縮めていく。ちょっと可笑しくて、切なくて、胸を打つそんなストーリーの結末は、誰もが想像出来そうなのだけど、温かい。ウィットに富んだ会話に笑い、胸打つ言葉が心に響くそんな素敵な物語だった。
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