あ

剣のあのレビュー・感想・評価

(1964年製作の映画)
4.8
海にエロスを感じる映画は当たり説。
しかしこの映画のエロスは、嫉妬と表裏一体なドス黒い青春の矛先でした。

海がエロいことで、せり出した埠頭にランニングしにいった時も全く海にはなびかず、最後は海から最も遠い高台で果てた国分は絶対に女へ手を出していないと分かる演出の妙がありました。

ラストがあまりにも急転直下で戸惑いましたが、ストーリーとしても原作が三島由紀夫ということで流石に面白く、壬生が唯一浜へ泳ぎに行かず、しかし皆を止められなかった責任をとってふんどし姿になるところで、単なる国分の真似を越えて真の主人公になるところや、女の嘘と賀川の嫉妬の絶妙な塩梅がスリルを生み出していたところは、並のスポ根モノを圧倒する面白さがありました。あとこの頃から三島由紀夫は自殺を考えていたのでしょうか?本人の最期と国分の最期は若干性質が異なる気がしましたが。

また、剣道部員たちの列を斜めから腰を据えて捉えた引きの絵や、脚の間や屋根瓦の間をうまく使って人を捉えるロングショットが、余白が多いのにも関わらず、全く脇が甘くない迫真のシネスコを形作っていました。シネスコが出てまもない頃の監督たちは、今の監督たちと比べて段違いにその性質を弁えていると、この前見た「ノーカントリー」と比べて思いました。

ついでにラスト、喪に服す剣道部員たちから若干遠ざかっていって「完」がカッコ良すぎます。
あ