余命幾ばくもないことを知ったらどうするか。
生き方も選べるなら、また死に方も。
オゾン監督の死生観は常識にとらわれなくても良いと思わされる。
当たり前に明日は誰にでもあるわけでもない。だけどわたし達はすぐ忘れてしまうし、忘れたふりがうまくなる。
主人公がまわりに打ち明けられない理由もわかるし、そんな気がなかったにも関わらず、何かを残したくなる気持ちもわかる。
余命3ヶ月と言われて、大きく荒れるわけでもないけれど、ジャンヌ・モロー演じる祖母にだけ打ち明ける。
「どうして私にだけ話したの?」
「おばあちゃんはもうすぐ死ぬから」
山程サプリや薬を飲んでる老い先の短い祖母としか共有出来ない気持ちと、祖母がいてくれたことへの感謝と愛情。この二人の会話が心に響く…。
家族だからといって、全てさらけ出す必要はないし、とはいえ、残された人達への想いがないわけでもない。
病気と積極的に闘うことも、死を受け入れて静かに過ごすことも、その人の生きる姿。
ストーリーでは、主人公はゲイで結構生々しいことが起きたり会話も際どいのに、静謐で自然体。
涙を誘うような演出はあまり無いのに、ラストシーンは却って感動的だった。