たぬー

悪は存在しないのたぬーのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
地方の自然豊かな町で娘と二人暮らしする謎の男の話。

濱口監督作品は一筋縄ではいかない。
森を下から映した長い長いカットで始まるオープニング。何も起こらないが石橋英子の劇版が不穏な空気を醸し出す。
自然豊かな小さな町に東京の芸能事務所がグランピング施設を作ろうとするところから物語は転がり出す。
濱口監督らしいワンカットの長い長い会話シーンが続く。説明会のシーン、東京からのドライブのシーンは必要かどうかよくわからないが見応えはある。
ストーリーを語るだけなら15分くらいで収まる話をじっくり見せる。

これは「もののけ姫」や「トトロ」のような自然界/人間界の話だと感じた。自然界/人間界それぞれの論理があり、そこに価値観の大きな違いはあるが「悪」は存在しない。
主人公の巧は自然界と人間界を行き来する、マージナルな存在。
巧の過去については全く語られないが、その大きな余白がこの作品の深い余韻をもたらしている。
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