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悪は存在しないのyasuのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.5
蓮實重彦御大が、朝日新聞に寄稿した批評で「絶対見る価値のある稀有な作品、劇場で各自その目で確かめられることを強く要請しておきたい」と書かれていたので、蓮實センセイがおっしゃるならば、見に行かねば思い、あまり好みの作品ではないけれども鑑賞してみることにする。
ベネチア映画祭で銀獅子賞を獲得しているし。

グランピング施設を開発する側と、それに反対する地元民との対立関係のストーリーとおもいきや、開発側が悪というわけでもなく、かといって地元民側も善というわけでもない、それぞれにグラデーションが存在する。つまりは純粋な悪人は存在しなく、そういう意味でタイトルにあるように「悪は存在しない」というテーマだと理解するものの、ラストシーンでその流れが突然に寸断される。

久々にどう解釈していいかサッパリわからない、難解なシーンに遭遇した。Webで解説を読み漁ってみたけど、納得できるものには出会えなかった。
蓮實センセイはラストシーンについて、批評では「その後に起こる光景を語ることなど恐ろしくて到底できない」と述べている。さすが蓮實センセイである。ネタバレを回避しつつ、明解な答えを示さないで逃げている、でも文章はかっこいい。

森と水の描写がタルフコスキーぽいなと思ったけど、タルフコスキーほどには画面に対して美意識があるというわけでもない。ただカメラワークや音効は奇抜だ。
しかし、様々なメディアの批評読むと撮影とカメラワークが絶賛されていてモヤモヤする。

絶賛する人は大絶賛で、そうでもない人は普通と評していて、世間の評判は真っ二つな印象。
あのラストシーンは今年最大の衝撃シーンかもしれない。興味がある人はどうぞ。
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