みーやん

悪は存在しないのみーやんのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.7
ライターの木津毅さんが「観るかどうかの判断のためにどんな映画かをある程度知りたい人はそれなりに調べたらいいけど、ハナから観るつもりの人はなるべく事前の情報は入れずに劇場に行った方がいい」と発言されていたので、ドライブマイカー・偶然と想像と公開時に観て次も必ず!と決めていた身としては極力もろもろシャットアウトして、どうやら好評らしいという程度の気配を薄目で眺めつつ劇場へ。たしかにそのとおりでした。

そんなわけなのでここでもあんまりあれこれ書きませんが、いま体感している世間の評価よりは賛否分かれる作品なんじゃないかと思います。観に行く人は最初から濱口監督のテイストが好きな人の比率が多いため高評価が多くなるっていう理屈ですかね。とか言いながら自分はかなり面白かったですけど、それでもなんでこれでこんなに面白くなるのかよくわからないなーと不思議な気持ちにさせられました。

演技のシンプルさ、悪く言えば棒読みなのがトレードマークではありますがちょっと度が過ぎてるように思えなくもない(とくに主役)し、広い視野で長めにカメラ回すのもコスト削減のために見えなくもないし、話の緩急のつけかたも単に「話が下手」みたいに思えなくもないし、いろいろと「普通はこうするもんだよね」みたいなところからはみ出てるんですよね。ただ、それは監督が自分なりのやり方で「映画が立ち現れる瞬間」みたいなのを模索しているからこそなんでしょうし、真摯に模索してるからこそなにかこちらに伝わってくるものがあるのかなと思います。

もともと配信にまわりにくい濱口作品ですし、今回とくに広い画角にぽちっと被写体が映ってることも多いですし、劇場で観てこそだと思います。なんじゃコレと思う方もいるかもしれませんが、日本映画のひとつの「イマココ」はおさえておいて絶対に損にならないんじゃないでしょうか!
みーやん

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