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52ヘルツのクジラたちのminoのネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

完成披露試写会が当たったので、原作未読のまま行きました。
パンフレットの隅に「フラッシュバック、ショックを受ける懸念のあるシーンがある」という記載と注意書きに飛ぶQRコードがあることに、上演直前に気づき、も、もうちょっと前に知りたかった……!!!!!

虐待、DV(精神、暴力)、ヤングケアラー、毒親母娘問題、トランスジェンダー、自死がそこそこ生々しいので、不安な方は先に原作を読んだ方がいいかもしれません。

加害者側の演技は若干大袈裟かなとは思いますが、セリフ等は監修が入っているためか、ものすごくリアルで、該当する当事者の人は映像そのまま見るのキツいと思います……。

難しい立場の人々を描いていますが、妙な美化や都合のよすぎる扱いはされておらず、その点は安心感できるかと思います。
役者さん、監督、制作に関わったすべてのひとが真摯に作品と向き合い作ろうとしたのが舞台挨拶からも伺えました。

エンドロールにヤングケアラーの団体や、トランスジェンダーに対する監修スタッフが入っていたのを見た時には、誠実に向き合って作られたことをより深く理解しました。
監督、八日目の蝉の方なんですね……。母娘間にありがちな地獄の解像度が高いのも納得しました……

現在原作小説を読みながらですが、映像化に向けて性格が変わっていたり、あったり無かったりするシーンはあります。
映画のなかでは少し足りないな?と感じていた部分がちゃんと小説では説明されていたりするので、両方見るとより楽しめます。

決して明るい内容ではありませんが、現実を生きる52ヘルツのくじらたちに届いて欲しい。
でも今まさに渦中の人が見るとこの描写キツくない……!?という不安もある迫力でした。
主演の杉咲花さん、素晴らしい演技力でしたね……俳優の名前を覚えられないタイプですが、今作で覚えました。

誰かの孤独の苦しみに手を繋ごうとしてくれる、真摯な映画でした。

原作読了後追記:
原作小説との違いは多々あったんですが、個人的に印象深い変更はアンさんとお母さんの関係。初見でも映画版は理想的すぎるかなとは感じていました。でも原作に書かれた現実に多いだろう悲しさは読んでいてあまりにも辛く、ここは映画版の改変にいっそ安堵しました。
この映画は、原作と同じ結末でもアンさんを救いたかったんだろうな。
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