このレビューはネタバレを含みます
犬も羊も無事じゃない描写がある。
苦手な人は気をつけて。
ストーリーはシンプルで、大きなことは特に起きないが「やったことが返ってくる」。
もし序盤で主人公が羊の母親を殺していなければ、一体どうなったのだろう。おそらく、それでもアダは元の親の元に帰っただろう。
スポーツ観戦やダンスの時、怯えて元気をなくしていたアダの姿が妙に悲しかった。
言葉はなくとも、感情による意思疎通が出来ていたところを見るに、完全に伝わらないわけでもない。
けれどそれは動物に近いもので、アダは人には馴染みきれていなかった。
この子が人として育てられた結果、どうなるのか。気になって最後まで見てしまった。
アダの服、自分たちの子供のために用意していたものを着せてたんじゃないかなぁ。
主人公の夫婦たちに愛はあった。
でもそれは、失ったかつてのアダを重ねていたもので、半分が羊、半分が人として生まれたアダに対して寄り添うような生き方ではなかったように思う。
子供を亡くした親の辛さは推し量るにはあまりある。
けれど主人公は子供から親を奪ってはいけなかった。アダを完全に自分の子にしようとしてはいけなかったのだ。
アダは自分に対する授かりものではなかったのだから。
自分の欲のために奪った彼女は、最後になにもかもを失う。
21世紀の丁寧な民話。