まーしー

コンクリート・ユートピアのまーしーのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.5
大地震で廃墟と化したソウルを舞台に、崩壊を免れた高層アパートの住民たちのサバイバル生活を描いた近未来SFドラマ。

いったい、どれほどの規模の地震だったのだろう。建物や道路は崩壊し、社会インフラも完全に停止。氷点下20度を超える極寒の世界からは世紀末感が漂う。
そこに大都市の面影はない。『マッドマックス2』や『北斗の拳』など、終末の世界観を連想する人が多いのも納得。

そのような希望を見いだせない世界を舞台に、本作では有事の時の人間の醜さを浮き彫りにする。
アパートの住民以外の人間をゴキブリと呼ぶ優生思想と同調圧力、食料優先・人命軽視の非人道的な倫理観……住民たちのコミュニティがカルト集団のように変移していく過程が自然発生的で違和感がない。
民主主義的な多数決やリーダー制、役割分担による分業制など、生活をシステマティックにすればするほど、住民たちが視野狭窄に陥っていくように感じた。

彼らのコミュニティのリーダー役を演じたのはイ・ビョンホン。
善人と悪人の顔を使い分けた彼の存在感が印象に残る。
大勢に向かって呼びかける拡声器を上手に使えなかったり、ステージ上で熱唱したりと、時にはコミカルに、時には男前に映り、キャラのバリエーションに富む。

ストーリーそのものは容赦ない。さすが韓国映画。
胸糞の悪い展開は、観る人を不快にさせるかも知れない。
だが、いざ有事となった場合に実際に起きそうな現実感を伴うところに、本作のクオリティの高さを感じる。
SFジャンルの世界観ながらも、そこで描かれている人間模様はリアルそのものだろう。