ナガエ

映画 マイホームヒーローのナガエのレビュー・感想・評価

映画 マイホームヒーロー(2024年製作の映画)
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さて、「齋藤飛鳥が出ている」というだけの理由でドラマ『マイホームヒーロー』を観ていて、まあ正直ドラマ版には齋藤飛鳥はあんまり出てこないんだけど、それなりに面白かったので、映画も観てみることに。

なかなか面白かった。

ただ、まずドラマ版との印象の違いを書いておこう。

ドラマ版は、「頭脳ゲーム」みたいな話だった。「娘の彼氏を殺した父親」が「ヤバい犯罪組織」に疑われつつ、「『娘の彼氏を殺した』という事実」や「その死体」を隠す、という話で、「趣味で推理小説を書いている」という父親が、そのミステリ的な知見を駆使して、最凶組織を騙し切る、みたいな話である。

「もうどう考えても無理でしょ」みたいな状況を、知恵と度胸とハッタリでどうにか乗り越えていく感じがなかなか面白くて、結構展開に惹かれた感じだった。

一方映画版は、「頭脳ゲーム」という印象ではない。まあ、ドラマと違って2時間しか無いし、大スクリーンで見せるなら、ちまちまやってるより映像的に映える方がいいしで、そうなるのはまあ当然だよねって感じなんだけど、「ドラマ版面白かったなー」という感じで映画を観ると、ちょっと違うという印象になるかもしれない。

映画版はとにかく、状況設定が興味深い。何せ、父親は「娘のために彼氏を殺した」わけだが、その当の娘がなんと刑事になっているのだ。ドラマ版では、ありとあらゆる奇策を駆使してどうにか「最悪」から逃げ切った父親だが、娘が刑事となるとその葛藤もまたややこしくなる。

さらに、物語の展開で良かったのは、「冒頭の冒頭で、早くも父親に容疑が向けられること」だ。しかも、「娘以外の刑事」と「ヤバい犯罪組織」の両方から疑われることになる。だから父親は、トップスピードで状況をどうにかする必要に迫られるというわけだ。

しかし、今回のミッションもまた無理難題である。なにせ父親には「10億円を持ち逃げした」という疑いが掛けられているのだ。「期日までに10億円返さないと家族を殺す」という状況は、物語が始まった時点でほぼ詰んでるだろ、という感じがする。

で、やっぱりさすがに無理すぎるよなーってことで、「これで物語終わるんじゃない?」みたいな展開に早くもなる。まだ物語の中盤ぐらいの時点である。ここで終わるはずがないと思いつつ、「マジでこっからどうなるわけ?」という感じになる。

で、「おいおい、そんなんアリなんか?」という展開を機に、物語が大きく動き出していくことになる。ドラマ版では、「厳しいながらも、ギリギリ成立し得る」みたいに感じる展開だったが、映画版はちょっと「さすがにそれは厳しくないかい?」と感じるような展開も多く、まあでも、物語としてはどうにか閉じたか、という感じ。

というわけで、ストーリー的にはちょっと色々あるなぁって感じなのだが、本作は役者がとても良かった。

まず、多少ひいき目が入っているだろうから先に触れておくと、齋藤飛鳥は良かったと思う。まあ、「全体的に、ちょっと刑事には見えない」みたいな部分はあるが、まあそれはあのスタイルとかあの顔の小ささとかではしゃーないだろう。ドラマ版では、齋藤飛鳥の役は「とにかく何も知らない」という設定だったので、観る者の感情を揺さぶるような状況に置かれることはないが、映画版では「色々知ってしまう」ので、その葛藤も描かれる。涙を流すようなシーンも結構あって、齋藤飛鳥推しだということもあるだろうが、なかなかグッときた。少なくとも、ドラマ版の齋藤飛鳥よりも断然良かった。

あと、とにかく素晴らしかったのが、「ヤバい犯罪組織」のトップを演じた津田健次郎だろう。作中で最も強いインパクトを放っていたと思う。メチャクチャ良かったなぁ。最近、この映画の番宣絡みで津田健次郎をテレビでよく観るのだが、僕は「声優として有名」ってことも知らないぐらいまったく始めましての人で、だから余計その演技に強いインパクトを感じたのだと思う。役柄がとにかく狂気じみた人物で、その雰囲気を実に狂気的に演じていた。素晴らしい。

あと個人的には、宮世琉弥がメチャクチャ良かった。本作では「不思議な男」として出てくるのだが、その不思議さを上手く醸し出していたと思う。彼は、予告でよく観る映画『恋わずらいのエリー』で主演を務めてるっぽいが、その予告で流れる「王子様っぽい感じ」より、本作『マイホームヒーロー』の雰囲気の方がとても合ってる感じがする。

というわけで、役者の演技的に結構良かったなと思います。
ナガエ

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