バリカタ

アイアンクローのバリカタのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.5
【プロレスファンは絶対に観ましょう】

先行上映にて鑑賞。

事実通りに描いているわけではありません。
あくまで「基づく」です。
事実との相違点は鑑賞してお気づき下さい。
ですから「これは違う!」というのは無粋。
というか、事実を映像化することが目的ではなく
「なぜ、こうなってしまったのか?」
を描くところに本テーマがあるのだと思うのです。

当時の雰囲気、プロレスシーン、プロレス中継シーン
の再現度。(個人的にはブックとカメラに向かっての
マイクアピールのシーンが特に好きです)
兄弟を演じた俳優陣や登場する全レスラーの
「失笑コスプレ」では「決してない」本物志向の仕上がり
具合に舌を巻きます。昔、テレビで見ていたアメリカン
プロレスがそこにあります。
これ見るだけでもプロレスファンならうれしいはず。

そして、いわくつきのこのプロレス家族の物語。
知ってるけどぐいぐいと引き込まれていくのは
もちろん実話ベースってこともあると思いますが、
脚色によってとてもエピソードがとても分かりやすく
スッキリとしてテンポよく描かれているからかな?

本作はある家族の物語。
子供への愛情深い親と、その愛情と期待に応えようと
努力と葛藤を続けた息子たちの話。
この描かれ方はきっと監督の想いが反映されているとは
思いますが・・・うん、そうなんだろうなぁって
おもいます。元凶は・・・まぁ、それだよねって。

しかし、本作は暗澹たる暴露物語ではないですよ。
そこはまさに風車の原理。
最後の最後、3カウントが入るまで結果はわからないのです。
エンドロールが始まっても席を立たずに一家の試合の結果を
見届けてほしいです。
僕にはそれが願いのようにも、後悔や贖罪のようにも
見えました。

良い作品でした。