たく

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のたくのレビュー・感想・評価

4.0
前情報を何も知らず、たまたま見かけた予告編でセル画時代みたいな懐かしい絵のタッチと何やら壮大なSF世界のギャップに引き込まれ、思わずその場で観たいリストに入れた作品。女子高生のゆるい日常と上空に佇む巨大な飛行物体という圧倒的にミスマッチな世界観の中で、突然訪れる日常の亀裂からパラレルワールドを思わせる展開に感情を揺さぶられまくった。

本作は黙示録的な話だと思うけど、前章なのでストーリーの全容はまだ掴めず、ワクワクした気持ちのまま5月公開の後章まで待たされるのも映画体験の醍醐味としてまた良し。幾田りらとあのちゃんの共演も知らずに観て、とにかくあのちゃんの演技のドハマり具合は、一人称を「ボク」と呼ぶことも含めて彼女に当て書きされたキャラと勘違いするほど素晴らしかった。幾田りらの声は、キャラの絵柄と共にちょっと「この世界の片隅に」のすずさんを思わせた。

ある日突然、東京湾の上空に巨大な球体が現れ、そこから発生した母艦が東京上空に静止し、攻撃を加えるでもなく日本語のひらがなを象った不気味な波動を出しながら佇み続けて3年後の世界。このシチュエーションは明らかに「インディペンデンス・デイ」なわけだけど、下界で暮らす人々は何事も無かったかのように平穏に暮らしてる。ここで門出とその親友の「おんたん」(凰蘭)を中心とした女子高生たちのわちゃわちゃした日常が描かれて、前半が少々退屈。

一般市民の生活の裏では自衛隊が母艦から発射される物体を「侵略者」と位置付け、強力な兵器で駆除していくのが「新世紀エヴァンゲリオン」の使徒みたいな不穏さで、これらの行動全てをアメリカが牛耳ってる感じがリアル。アメリカにとって日本の国土は実験場でしかなく、日本人がどうなっても構わないという傍若無人ぶりが垣間見えるのが今の日本のリアルと被って怖い。市民が裏で起こってる政治的な状況を全く知らないのはこないだ観た「終わらない週末」を連想した。兵器を発射する操作盤がプレステのコントローラーみたいなデザインなのが何とも皮肉。

後半、不思議な力が働いて凰蘭が無意識化に見る過去の回想が観る者の心理をグッと掴んでくる展開で、門出と凰蘭のキャラが現在と全く違うところとか、パラレルワールドみたいな描かれ方に「まどか☆マギカ」のまどかとほむらみたいな関係なのか?と勝手にテンション上がった。見た目の可愛さに反して理知的な侵略者が、自分を救ってくれたこの二人に地球の命運を託すところにセカイ系も感じさせた。キャラが記号的に涙を流してる絵柄が印象的で、本心を口に出せない日本人特有の心理を絵で語ってるのかなと思った。エンドクレジット後の予告映像に絶望的な展開を予想させつつ、それでも救いで終わって欲しいという思いが強く残った。
たく

たく