コマミー

ビニールハウスのコマミーのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.6
【知らず知らずと…】




「半地下はまだマシ」とキャッチフレーズがついているため、これはまた面白い陰湿な韓国映画が現れたなと感じた。ポスターに映っている空虚な表情の"キム・ソヒョン"演じる主人公と間に映る"ビニールハウス"の姿。

果たして本作は"どんな韓国の姿"を見せてくれるのだろうか?

まず、主人公の顔一つで韓国の"あらゆる問題が浮き彫り"していたところが面白かった。その空虚な表情・行動・そして彼女が見えてるもので韓国のあらゆる問題が表現されているし、本作自体がその問題の詰め合わせみたいな作りをしていて"何一つこちらも笑えなかった"。
だが本作、最初は単に哀しい運命を背負っている1人の女性の物語として、哀しい場面と少し微笑ましい場面がバランス良く交差していて、最初や中盤に差し掛かる寸前のシーンまでそんなに陰湿さは感じさせなかった。
だが本作で本腰を入れ始めたのは"中盤からラストまで"。ここでまるで崖から真っ逆様に落ちるように"地獄とも言うべきシーン"に変わる。
人間というものは良く、"知らず知らずととんでもないドツボにハマってしまう"事があるかもしれないが、本作の中で見せる主人公に降りかかる"悪夢のような出来事"はそんな感じに始まっていくのだ。特にラストで、"ある2人が亡くなるシーン"はどうゆう感情で見れば良いか分からず、とても"胸糞"なシーンであった。

ただキャッチフレーズ通り、あの"オスカー受賞作"と比べてしまっては元も子もない映画だなと感じた。だって全然境遇が違うもん。
それにちょくちょく説明が全然ないシーンもあり、訳わからなさも結構ある作品だった。主人公が"ビニールハウスで住むようになった理由"が何だったのか?など、"障害者の描き方"など、本作には分からない・足りないシーンも多すぎた。本当に、残念な作品だなと感じた。

それでも、キム・ソヒョンの演技力が何とか微妙にかき消していて、まさに役者魂を感じた作品だったし、"アン・ソヨ"が演じた"スンナム"がなかなか怖かった。

面白さは今ひとつだったが、これはこれで怖いスリラー作品だった。
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