コマミー

パスト ライブス/再会のコマミーのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.7
【縁、運命で繋がった2人と1人】




「デューン2」同様、本公開まで待ちきれず、22日から24日まで3日間に再び"先行公開"された本作を見に行った。
今年開催された"アカデミー賞"ではノミネートされたが無冠で終わってしまったが、全米映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞など、各地の映画賞では高く評価された作品だ。「ミナリ」や「フェアウェル」、「エブエブ」同様、"A24とアジア"の架け橋が賞に導いた作品と言えよう。

韓国と海外…子供の頃に"離れ離れ"になってしまった"ノラ"と"ヘソン"の再会の物語を描いている他、その間に挟まれるノラの夫であるアメリカ人の"アーサー"の"心境"も描いたドラマ作品となっている。

正直、こんなに"惨い話"だとは思いもしなかった。よくよく考えれば、アーサーという存在がいながら、ノラはヘソンと会い、アーサーといた時よりも意味は違えど楽しそうに接している光景を見ると複雑すぎてなんか嫌になるなと感じてしまったが、本作で「これは傑作だな」と感じたのはそこで、このアーサーの"嫉妬とは違うような複雑な心境"をノラとヘソンの再会を通して、繊細に描いた作品だからなのだ。
ノラとヘソンの願いが成就したのも確かに素晴らしい事なのかもしれないが、そんな2人を見つめるアーサーという存在あってこその本作なのかなという印象で、本作はいろいろ賛否が分かれた作品なのかなという総評に達した。それにしても、アーサーの心が広すぎる。恐怖心もあっただろうに…。

だが、これはこれで2人と1人…これらが"縁・運命"にて繋がったからこそ生まれた物語なのだと思った。そして本作が、"一つの人間の選択"の物語でもあるという事。悲しい選択も惨いと感じる選択も、一つの人間の個性なのではないかと感じた。かなり無理矢理な解釈なのかもしれないが、私はそう感じた。

"ジョン・マガロ"が演じた役にまた泣かされるとは思わなかった。ここ最近、彼は本当に重要な役柄を演じる事が多いが、このアーサー役が一番だと感じた。過去の恋と現在の恋に挟まれてしまう"現在の愛"をここまで繊細に演じれたのは凄いなと感じた。本作で彼の株もまた上がったに違いないなと感じた。
そしてノラを演じた"グレタ・リー"とヘソンを演じた"ユ・テオ"の一見楽しそうに見えて、気まずそうな一面を見せた演技が素晴らしかった。中でもユ・テオが演じたヘソンは、割とこれが"韓国的な男"なのかなと思わせる所があって、自然的は言い過ぎだけれど、圧倒された。

あと音楽も私好みで、作風にもあっていて良かった。"クリストファー・ベアとダニエル・ローセン"という方が手掛けていて、落ち着いた曲が多いのだが、2人の出会いや心境によって緩急がしっかりしているのも良かった。

思っていた以上に惨い恋愛映画であったが、本作がアーサーに向けた物語であったのも良かった。詳しくは本編を見てそれを堪能してほしいのだが、縁や運命が紡ぐ人間の選択の物語として美しく昇華させた作品として、本作は国を超えて、これからも議論がされ続けていくのだろうなと感じた。
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