ありきたりな黒人描写ばかりの世間に辟易していた黒人の小説家は、別名義でやけくそで書いた「黒人的なステレオタイプの小説」を書いたことで大ヒットしてしまう。
「抑圧される黒人が奮起するというストーリーはもう見飽きた」「人種に関係なく1人の人間のストーリーを書きたい」という主人公の思いとは裏腹に世間はそれを許してくれない。ありきたりなステレオタイプが好まれる。皮肉たっぷりに描かれるストーリーと対比して、主人公の家族のエピソードが進行する。人種に囚われない、家族の死や病気、出会いと別れ。主人公が描きたいのはこういうことなんだろうなあと思った。
ラスト30分でも静かに進行していくストーリーは前半以上に皮肉さが加速していくのが良かった。特にラスト。あまりにタイムリーだったあのアジア人の描写。冷水を浴びせかけるようなラストが好き。
印象的だったのは「人種差別にならないよう黒人作家の僕が選ばれた」や「今こそ黒人の声に耳を傾けるべきよ」の台詞。おそらくすべてを分かった上でこの台詞を入れている。「まだそのレベルなの?」という呆れ。こういう皮肉はとても好き。全編通してコメディーに振りすぎていない上品な作品だった。
以下は個人的なメモ
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「君の先祖はナチスか?」
「本は人生を変える」
「叫ぶな、原始人かよ」
痛いほどリアル、緊迫感、生々しい。
評論でよく見かける言葉
「白人が求めているのは真実じゃなく免罪符だ」
「人種差別にならないよう黒人作家の僕が選ばれた」
「ステレオタイプの黒人を望んでるんなら遅れた方がいい」
冗談が本当になってどんどんおかしな方向へ。
「黒人の元受刑者でも金持ちになれる国だ」
「今こそ黒人の声に耳を傾けるべきよ」
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