黒人についてのステレオタイプに抗う黒人作家モンクは、彼の作品の中で世間の望む黒人像を作品で取り上げないことから高い文学性にもかかわらず売れない作家としてくすぶっている。そんな彼が皮肉や冗談でコテコテの世間の黒人観をこれでもかと盛り込んだ作品を偽名で書いたところ、その作品が意図せず売れまくるというシニカルさを笑う作品。
モンクが刑務所上がりの逃亡中の犯罪者という設定に四苦八苦する様、自分がクズだと思う作品が売れていく困惑、文学賞の選考委員になったモンクが受賞させまいと抵抗したにもかかわらず偽名で書いた自分の作品が賞を取ってしまうこと、などコメディーとしてはある程度予想がつくもののモンクの堅物さとの対比が効いていてかなり笑える。
ただ、上記コメディー要素で笑わせてはくるものの、社会の黒人像に対する痛烈な皮肉、現代社会での家族の関係性の問題、アメリカのメディアの権威性への疑問、などなど社会問題を鋭くえぐっている社会派ドラマ要素も強い。
重めのテーマを笑いをまじえて見せるバランスと脚本は見事だが、メタな結末は劇中の映画撮影のやりとりをなぞっているのだろうが、もっと明確な終わり方にして欲しかったかな。こう思わされることが、監督の策にハマっているのか?
