花火

フィシスの波文の花火のネタバレレビュー・内容・結末

フィシスの波文(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

紙の上を筆記具が滑る音から始まり、子供がクレヨンでひたすらぐるぐる渦を描く様をほぼ真上から見下ろすモノクロの画面に、それに近い模様のグラフィックののち、水面に落ちた雫がやはり同じような模様を形作る光景が描かれる。この冒頭はかなり心を掴んで順調な滑り出しだ。映画は中盤までこんな風に、文様の刻まれた唐紙の制作過程、それを使う寺社仏閣や祭事に伝統的な建物、そしてそのモチーフになった自然のイメージとを行き来する。面白いのは唐紙の制作過程や実際に使用するシーンにおいても、しばしばモチーフ元の植物や液体といったものが写り込むことだ。これはそうしたモチーフが当たり前に存在することを補強しているし、美学的な画面づくりもダイザイガ要求しているようで鼻につかない。ただ途中から出てくるアイヌの神事は正直文様以上に興味深いので、ここからはいっそ別の映画として一本作ってくれた方がよかったかもしれない。
花火

花火