このレビューはネタバレを含みます
3人を中心とした会話劇のみなのに、ドラマの盛り上がりをつくるのがとにかくうまい。それぞれの生活とその周りにいる人々、そしてさらにその先にある社会のありようが、会話だけでもありありと目に浮かぶ。ものがたりが進んでいくうちに明らかになる事情、変化していく関係性は小さいようでドラマチックで、ことばにすると陳腐になりそうなリアリティを、手触りのあるものとして感じさせている。
ナターシャ・リオンのタフなようで繊細なキャラクターは他の作品と通じるけれど、父の死期に無関心のように振る舞いながら、だれよりも深く傷ついていることがわかるものがたり運びのなかで、そのこころの様子を十二分に体現していて、彼女のベストアクトかもしれない。
three daghtersではなく、his three daughersなのもポイントなのかなと思う。あくまで描かれない中心として父があるのではなく、ラストには姿を現し、彼のドラマチックな妄想を描く。けれども現実は娘たちを前にして思いの丈を語ることはできず、あっけなく死を迎えてしまう、そんなアンチクライマックスさにこそ、家族の関係性の本質のようなものが浮かび上がっているように感じる。彼のソファに順番に腰をかける娘たちの姿を、彼自身は見ることができないのだ。