Habby中野

恋恋風塵(れんれんふうじん)のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

まーたトンネルだ。さいきんトンネルの夢を見ることが多くて少し怖くなってきている。遠くに青く世界が広がっている。向こう側は明るい。でも、もし通り抜けることができなかったら、それは怖ろしい悪夢だ。
暗闇と緑の繰り返しの先に着いたのはああ懐かしの十分、友人らとランタン飛ばしたあの思い出からさらに50年前、少年と少女がいたある時。山の上で主な仕事は炭鉱掘り、みな汚れてもなお白いシャツを着て家族は多く石段に囲まれた家々は少し歪ながらも堂々と立っている。カメラはその人々を、トンネルの片側に囲まれた集落を、山の上の景色をロングで捉える。ロングショットは美しく、でもやはり牢獄でもある。田舎の村から抜けても、淡い関係からは抜け出すことはできない。うだつの上がらない生活、兵役、故郷、家族、民族、台湾。いくら電車に乗り続けても、出航する中国人を見送っても、逃れることはできない。それら一つ一つはかけがえなく幸福なものであっても、それらに別れを告げることができないことは、苦しみでしかない。
台風にやられて芋のツルが折れる。大きく育たない。でもツルが伸びすぎたら栄養不足で小粒になる。
じゃあいったいどうしたらいい?
……芋は薬用人参より難しいのさ。
淡々とした彼の生活の中で、そしてこの映画の中で、唯一保証されていた夢、淡い男女の関係が、突然終わる。第三者からの手紙というこれ以上ない残酷さをまとって。美しい山々の風景は光の半分を遮る巨大な壁となる。
人間の生活は、我々の希望とは違う姿で支えられているのかもしれない。しがらみと思うそれらから逃げ、縋り付くものをもったとして、それは実は脆くて削がれて残る現実には歯が立たない。金槌の音、印刷機の音、信号機、青空映画、家族、食べ物、ギターの音色、恋。生活している人々が逆らえないものによってこれらの生活が成り立っていると考えると、こんなに虚しいことはないよな。いくら山々が美しくとも。一体なんの下に生きている?
Habby中野

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