小川勝広

リンダはチキンがたべたい!の小川勝広のレビュー・感想・評価

4.0
今回も映画評風に書きました。
次回からはちゃんと書きます。


映画評『リンダはチキンが食べたい!』:印象派アニメーションの可能性
1. 印象派アニメーションの可能性

近年、アニメーション表現の可能性は大きく広がり続けている。
その中でも、印象派の絵画のようなタッチを取り入れたアニメーションは、独特な魅力と可能性を秘めている。

高畑勲の『かぐや姫の物語』や圧倒的画力の『プロメア』は、
抽象的な設定や色彩を用いることで、
観客が作品世界に入り込みやすい環境を作り出し、
高い評価を得た。

『リンダはチキンが食べたい!』は、
日常の現実的な物語を舞台にしながらも、
ゼネストという非日常的な設定を取り入れることや、
パブロ、フィデル、カストロという名の登場人物を配置する事で、
印象派的な表現と物語を巧みに融合させている。

2. ゼネストと印象派表現の親和性

本作におけるゼネストは、
単なる舞台設定としてではなく、
印象派的な表現と密接に結びついている。

『地下鉄のザジ』に代表される、
フランス映画でよく見られる、
「時が止まっている」ような表現は、
印象派絵画の特徴である時間や瞬間を切り取ったような描写と共通している。

また、ゼネストによって社会の秩序が乱れた中で、
(あるいは秩序を取り戻そうとする状況の中で)
自由奔放な登場人物たちが繰り広げる騒動は、
アニメやCGであれば、
だれもいない世界や、
人々が静止している空間、
または、
宇宙船が目の前に浮かんでいる、
あるいは、
七つの穴等、
印象派絵画の色彩や構図の自由さと呼応している。

3. 計算された色彩と表現

本作は、カラフルな配色と彩色の細やかな計算によって、
印象派的な世界観を更に深めている。

特に後半の、声と歌、明と暗、点と線、配色と彩色が織り成す表現は圧巻で、観客を作品世界に引き込む力を持っている。

4. まとめ

『リンダはチキンが食べたい!』は、
印象派的な表現と日常的な物語を巧みに融合させた、
独創的で魅力的なアニメーション作品である。

本作は、アニメーション表現の可能性を広げると同時に、印象派絵画風アニメーションの新たな魅力を提示していると言えるだろう。