小川勝広

No.10の小川勝広のレビュー・感想・評価

No.10(2021年製作の映画)
3.5
映画評論風に第三弾→

■映画『No.10』:緻密な仕掛けと観客を翻弄する内容。

〇ジャンルを超えた多様性:ノワールからメタ視点まで、映画『No.10』は、一言でジャンルを括るのは難しい作品だ。

ノワール、Vシネ、火サス、など、様々な解釈のされ方をするだろう。

現代風に言えばメタ視点を取り入れた作品とも評せる。

オーソドックスな解釈では、ブレヒト風作品と捉えることも可能だろう。

トリアーの『ドッグヴィル』や、
カンヌのパルムドール作品でもあり、
同じ北欧の作品『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のような特異な作品を好む観客であれば、本作の高い完成度を評価できるだろう。

一方、そういった作品に興味が無い観客にとっては、
理解しにくく、途中で置いてけぼりにされる可能性もある。

前半は巧妙な仕掛けが次々と積み重ねられ、
観客の興味を惹きつける。

高い技術力も光っており、映像美も楽しめる。

本作をセカイ系というのであれば、
セカイ系にありがちな、
ベクトルが星のカナタや大気圏外に向かわないという設定は、
観客を一時的にでもミスリードさせる効果があり、
見事?なストーリー展開と演出とも言えるだろう。

〇観客を翻弄するラスト:ラストに向かって、マリウスが遮るのか遮らないのか、行動を起こすのか起こさないのかというように、
おもしろいかどうかは別にして、
ストーリーの落とし前を明確にできたかもしれない。

全ての試行錯誤を提示する方法もありだろう、
しかし、演出家カール(劇中の演出家)はあえてそれを許さなかったのだろう。

【蛇足】
秀吉や家康が、
右手に鉄砲、左手に聖書を、
見破ってなかったら、
僕たちは、ポルトガル語か、フランス語か英語を話していただろう。