復讐が人をおかしくするんだとか、愛は絶望を凌駕できるんだとか、そういう尺度で物語を説明しようとしない潔さには好感を持った。圧倒的にピュアな狂気は、なにも殺人ピエロだけが持っているわけではない。ホラー映画を観に行って喜んでいられるのは、私たちは皆で「正気」なんだと安心しているからであって、本当は知っているつもりのあの人の心の深度なんて、誰にも測ることはできないんだとゾッとさせる、嫌な薄気味悪さが最後まで増幅していく。
沖縄がこんなにじめっとした暗さで映されるなんて、と顔をしかめながら観て、でもそんな「明るくて美しい世界」を無邪気に信じたい私たちへの警告なんだ、と気づく2時間の体験。良い、という評価はなんだか的外れなんだけど、うん、良かった。
