あおは

一月の声に歓びを刻めのあおはのネタバレレビュー・内容・結末

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2週間以上前に鑑賞し感想を書いていなかったため、かなりうろ覚えになってしまった。

予告をみて、幼いころに性被害を受けて心に傷を抱えながら生きる女性の話だと思っていたから、オムニバス形式であることには少し驚いた。

この3作を貫くテーマは“罪を感じなくてもいい人が罪を感じていること”と“過去の痛みを引きずって生きること”だと思った。他にも3つの話の共通点と言えば、“親子関係に蟠りがあること”や“自分が生きていることを肯定できない”などもあったけれど、自分は罪という言葉が印象に残った。
しかし軸となるテーマが分かりづらく、その点においてはもどかしさも覚えた。

1つ目のお話で罪を感じているのは、性転換した父親と生き残っている娘。
ダイニングで死んだレイコと対話するシーンは、狂気や呪いのようなものを感じ、恐ろしくて鳥肌が立った。
またそのシーンで自分の股間を叩きながら呻いていたことから、自分も娘を傷つけた男という性別だったことに罪悪感覚えてたのかな……、なんて考えすぎか。でもその事件がきっかけで性別に正直になり性転換をし、その影響で家族が離れ離れになったとしたら罪悪感は生まれると思う。
生き残った娘のほうは、親が死んだレイコのことばかり嘆くから自分が生きていることに対して罪悪感を感じても不思議ではないと思う。

2つ目のお話で罪悪感を感じているのは、海ちゃん。交通事故で重体に陥った母親の延命治療をしないという決断をしたということに対してひどく罪悪感を抱いており、「人間なんてみんな罪人だ」と叫ぶ。
この付き纏う罪悪感のせいで彼女は幸せになれずにいたけれど、2作目には仕掛けが施されていて幸せな終わり方をしていた。

3つ目のお話で罪悪感を感じているのは、レイコ。幼いころにレイプされそうになり、男の口にスコップを刺したことに対して。
このトラウマで彼女はセックスをできなくなっていたが、作中で突然現れたレンタル彼氏の人とは体を重ねられたという話。
気になったのは1つ目のお話で家族の痛みになっているレイコと、3つ目のお話で焦点が当てられているレイコが同一人物なのかということ。
白黒だったから、もし生きていたらというifの世界線なのか、まったく関係ない話なのか。でも名前を同じにするなら同一人物だと思うし、そこを納得できるような作りにしてほしかったと思った。

エンタメよりは純文学のような雰囲気を醸し出している作品で、時間の流れ方や空気の匂いはとても好きな作品だった。
あおは

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