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私たちの世界のnekokatzのレビュー・感想・評価

私たちの世界(2023年製作の映画)
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最近の映画記録、TIFFでみた「私たちの世界」のこと。ユース部門TIFFティーンズの一本で、コソボ映画。
大変好感が持てる作品で、ユース部門はこういう映画があるから価値があると思う。

舞台は2007年のコソボ。国境近くの山村ブルニャクで育ったヴォルタとゾエは従姉妹同士。
ヴォルタは父をコソボ紛争で亡くしており、ゾエの両親に育てられた。
二人は親に内緒で進学手続きをしていて、ある日ヴォルタの父が遺した赤いジェッタに乗って首都に向かい、プリシュティナ大学に入学する…という導入。
大学の女子寮に二人は入るのだが…。

この時期のコソボは独立前夜で、セルビアと欧米との間で宙ぶらりん。
大学では授業があるのに講師が来なかったり、政府機能も適当。一方で親の世代には戦争のキズがあり、若者は失業率が高い社会。
待望の大学生活が思うように行かない二人が描かれる。

この大学の寮生活、青春群像を見せつつ、国家の疲弊が背景透けて見えるのが大変素晴らしい。(日本もこうなっちゃうんじゃないの?)
やや賢いヴォルタと、華美なものが好きなゾエの対比。女子版「キッズ・リターン」みたいに二人の道は分かれていく。ほろ苦い終わり方も良い。
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