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晩春 4Kデジタル修復版のtomひでのレビュー・感想・評価

晩春 4Kデジタル修復版(1949年製作の映画)
4.0
「晩春」4Kリマスター版を鑑賞。本編前に画はニューヨーク、音はカリフォルニアのスタジオで修復されたとのクレジットが入る。

「晩春」を観るのは3回目。流石の4Kリマスター版。アマゾンプライムで観られる「晩春」とは別の映画になっている(笑)こんなに綺麗に美しくなるんだと感心する。

=====以下ネタバレあり=====

一人娘と父(母は亡くなっている)の家族、娘が嫁に出るまでの話。娘は父を愛していて、父も娘を愛している。こんな愛を持って生きている人がこの世にいるのだろうか? と思うような父と娘の関係。現代の日本でこんな父娘が存在しているとは想像出来ない(笑)それ程格調高く美しい関係。

「その湯飲み3センチ蒲田、2センチ大船」と当時の松竹の2つの撮影所の位置から画面に映る小物の左右位置を小津の撮影現場ではそうやって指示していたそう。このことからも小津の画づくりの拘りが半端ないことが分かる。映画冒頭で日本画家の美術展のポスターが映るが、画家が絵を描くように小津もワンショットワンショット、一枚の絵を描くように撮影していた事がこの4Kリマスター版で更に分かり易くなっている。

小津の映画に出てくる画って日常のどこにでもある画のはずが、小津独自のどこにもない画になっているのが本当に面白い。まさに唯一無二の画家。

映画後半で二人が京都の宿で布団を並べて寝るシーン、電気を消して浮かびあがる背後の障子の竹林の影が美しい。4Kリマスターで更に美しくなっていて気持ち良すぎる。

ひとりで映画の笑いを背負っている杉村春子、いいな〜。笠智衆とのお寺のシーン、何気ない鳩の飛び立ちも完璧なタイミングでクラクラする(笑)背後の石段をおさめた画づくりもいい。

嘘をついて娘を嫁に出し、ひとりになった部屋で林檎を剥きうなだれる笠智衆、深い余韻で終わるラストシーンも美し過ぎる。「東京物語」に向かっていくこの時期の小津安二郎は色んな意味でヤバイ映画作家になっている。

「お嫁にいったって、これ以上の幸せがあると思えない」
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