note

コーマのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

コーマ(1977年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ボストン記念病院に勤務する医師スーザンの友人が同病院で簡単な手術を受けるも医療ミスで昏睡(コーマ)状態になってしまう。疑問を感じたスーザンは原因究明に乗り出すが、過去に多数の昏睡患者がいることに愕然とする。しかも数日後、今度は関節の手術を受けた男が同じ状態に陥ってしまい、ますます不信感を募らせていく…。

医療ミスにより臓器売買の秘密を知ってしまった女医に迫る危機を描く。
ロビン・クックの同名ベストセラー小説をSF作家マイケル・クライトンが監督した医療サスペンスの佳作。

女医スーザンは、謎の昏睡に陥る患者が増えていることに気づく。
偶然にしては、数が多すぎる。
植物状態になった患者たちには、性別や年齢、執刀医もバラバラで、これといった共通点が見当たらない。
特定の病気や怪我の手術ではないのに、昏睡状態を招いているのが謎だ。
スーザンは恋人のマークに相談するが、院内での出世を狙う彼は聴く耳を持たない。

やがて、同じ手術室で事件が発生していることが判明。
「わざと昏睡させる方法はあるのか?」と麻酔医の疑問から、病院の裏側を調べるスーザンだが、ある夜、殺し屋に狙われる。

現代は医療に生死の決定を委ねている。
多くの人間の死を扱う病院では、働く人々も普通の感覚が麻痺していくのかもしれない。
劇中、人間の脳味噌をお喋りしながらスライスする解剖医、仕事を卑下する自虐的な麻酔医が登場したり、スーザンも遺体安置所で死体の列を押して、殺し屋に次々とぶつけて逃げる。
どこか感覚がズレていると思うのは、私だけか?

真相の鍵は、昏睡患者が送られる研究所にあると目星をつけるスーザン。
この窓のない研究所の建物が、コンクリートの巨大な要塞のようで異様な雰囲気。
その中では昏睡状態の患者を骨にワイヤーを通して吊るしてある。
このビジュアルは今見ても強烈。
夢に出てきそうで怖い。

栄養や異常はコンピュータ管理、床ずれがなく、コストも人件費も掛からず、いい事づくめだと、明るくサラリと説明される。
しかし、その研究所の実態は昏睡患者から臓器を抜いて売りつけるという、大病院が運営する臓器提供バンク。
こんな姿にはなりたくない。
自分が昏睡状態の患者だとしたら、とても怖くなる。
本作には、人の生命を弄ぶ不謹慎さと不気味な怖さがずっと漂っている。

よせば良いのにスーザンは黒幕の外科部長に相談し、あわや昏睡に陥る危機をマークの機転が救い、悪事がバレる。
現在なら、主人公が昏睡して終わる「真実は闇の中」のバッドエンドだろうが、ギリギリで救われる70年代的結末が良い。

向こう見ずにも程があるスーザンの調査には終始ハラハラさせられ通し。
恋人マークは黒幕側の人間では?と思わせるミスリードも効いていて、サスペンスとしては上出来。
原作者も監督も医師を志していただけあって専門用語が飛び交い、世界観もしっかりしている。

陰謀の目的が病院の金儲けのみなのか?
それとも富裕層が長生きするためのスポンサーで、組織で行っているのか?
巨悪の根源が分かり辛いところが難点と言えるだろう。

病院を舞台とした陰謀を描く医療サスペンスの草分けとも言える本作。
医者に命を預けることに恐怖を感じる作品だ。
note

note