【第97回アカデミー賞 国際長編映画賞マレーシア代表】
ジン・オングの監督デビュー作。金馬奨で主演男優賞を受賞、アカデミー国際長編映画賞マレーシア代表として出品された。
非常に繊細でよく出来た人間ドラマ。耳と口が不自由や兄とやさぐれた弟が悲劇に巻き込まれる様を描いている。
兄弟を演じたウー・カンレン、ジャック・タンの演技が素晴らしい。当事者キャスティングではないのが少し気になるところではあるが、二人の魅力が全開だ。
障がいを抱えながら懸命に生きる兄と麻薬の密売で稼ぐ弟、対照的な二人が織りなす物語が非常に秀逸。ある悲劇が起こってからのロードムービー的な語り口もいい。
惜しみない兄弟愛を繊細なタッチで気持ちよく描いていく。だんだんと辛くなっていく物語だが、語り口は非常に爽やか。過度に重くなりすぎない演出が見事だ。
欠点の見つからない優れた作品。マレーシア映画の底力を感じる豊かな風味のある作品に仕上がっている。