Pinch

パーマネント・バケーションのPinchのレビュー・感想・評価

5.0
「全ての人間は精神的な意味でさまよえる浮浪者だ」という言説が私の根底にあります。この映画の影響は大きい。

無機的にタバコをふかす少女の前で気分よく踊る少年、檻の中で神との交信を求めて間欠的に叫び続ける狂女、通常ならば心地よいメロディーが狂って演奏された場合の異様さ、場違いに主張されるドップラー効果など、起こるべくして起こる背景を絶たれた実存が浮き立つ場面は、初めて見たときも、今も、素晴らしい。日常の濁りを一気に非日常化する芸術の機能です。

私が一貫してこの映画にこだわるのは、私がずっと私に与えられた背景の中でしか動かず、社会常識に準じて生きてはいるものの、その無意味さも認識し過ぎているからかもしれません。一方で、実際に背景を破壊したらどうなるか、その代償も嫌というほど分かっています。だから、ギリギリのラインに近づいたり遠のいたりして生きています。多寡はあっても皆さんも同じですよね。

そんなわけで、数年に一回この映画に舞い戻る次第。
Pinch

Pinch