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義父養父のcyphのレビュー・感想・評価

義父養父(2023年製作の映画)
4.3
映画の原石を叩いて確かめるような慎重で実直な映画 カメラの置き方・絵の美しさ・衣擦れや咀嚼音の拾い方・家そのものの魅力・役者の顔への迫り方 何から何まで華美を排することに心を砕いていてかっこよかった 熱海が舞台の映画って初めて見たかも、わたしにとって母の実家であり数年に渡りこんこんと眠り続ける祖母を訪ねる先でもあるその土地は、この映画が自然と反映する通り常に死の気配が染み込んでる あの異様にメランコリックな夕方のチャイムが一連のシークエンスの中に捉えられてるの素晴らしすぎて呆気に取られてしまった そう、そこにはそんな日常が沈澱してる

双子のおじさんって見たことない と笑い混じりの台詞が先走るように双子のおじさんという存在の面白さが不確かな映画をぐんぐん前に引っ張っていって面白い じゃらじゃらした簾越しのコーヒーを淹れながらのやり取りよかった 映画とは義理の家族をスクリーンの中に作り上げては解散させる芸術だってデプレシャンが言ってた

もうすぐ死んでしまうひとを温めるこたつ布団の模様、その頭を支える二つ折りの座布団、真っ暗な夜のギャラリーの床の冷たさ、将棋盤に差し込む陽光、年季の入った日本家屋のちょっとした不気味さ 死が生活に混じり込んでも尚それを跳ね返す生活の強度 みたいなものが捉えられてるのも好ましかった 生と死の間に眠りがある、アピチャッポン作品や祖母を見ながら学んだことが静かにこの作品の中にも置かれてた
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