スティーブン・スピルバーグ×トム・クルーズの最強タッグによるSF大作。
二人が組んだ映画には「宇宙戦争」もありますが、あちらよりも完成度は高いです。
原作はフィリップ・K・ディック。
原作小説を大きく膨らませて、2054年の未来を描いております。
近未来、アメリカでは殺人事件の発生率が大幅に低下していた。
なぜなら、プリコグと呼ばれる三人の予知能力者たちによって、これから起こる殺人事件が予知され、それを元に捜査班が事件を未然に防ぎ、「まだ何もしていない犯人」を捕らえていたからである。
このシステムによって、殺人事件はほとんど起こらなくなっていた。
しかし、次に起こる殺人の犯人が自分だと予知された捜査班のリーダーであるトム・クルーズは、自らの汚名をはらすためにも逃亡をはかる。
何故、見も知らない相手を殺すことになるのか?
システムに不備があるのではないか?
迫り来るかつての部下たち・・・・・果たして、事件の黒幕は誰なのか?
シルバーを基調とした世界観が、美しくもどこかザラついた「不完全な未来」を思わせます。
一見、完璧なシステムが、邪な目的によって使われたら?
映画で描かれる未来社会よりも、もっと不完全すぎる現実社会に見事にリンクするテーマですね。
内容としては、罠にはめられた主人公が黒幕を追うという、所謂「逃亡者」タイプのお話なわけで、ありきたりと言ってしまえばそれまでなのですが、この映画の魅力は近未来を彩る様々な小道具にあると思います。
現在の延長線上にあると思わせる設定やガジェット群が、主に男心をくすぐるのです。
ディスプレイを操作するデータグローブ、まるで車がエレベーターのように運ばれるハイウェイ、超立体視できるプロジェクター、捜査官が装備するジェットパック、街中に設置された網膜認証装置、それを使った広告や宣材、強制的に網膜スキャンを行う小型ロボットのスパイダー・・・などなど、魅力あふれる小道具が次々と登場して近未来感を演出してくれます。
こういったジャンルの映画では、こういった小道具関連も重要なファクターとなるので、あまりおろそかにしてはいけない部分なのではないでしょうか。
その点、本作に登場する網膜スキャンやスパイダーは、ちゃんと話の内容にも絡んで、サスペンスを盛り上げることにも一役かっているのが良いと思います。
個人的には、もう少し尺をつめてコンパクトにまとめたほうが良かったと思うのですが、どうでしょうか?
中盤から終盤にかけて、間延びしたように感じられたのですが。
コリン・ファレルは哀しい役どころでしたが、ミスディレクションとして有効に機能していましたね。有能だったろうに、ご愁傷さまでした(苦笑)
システムに依存しすぎるのは極めて危険であり、多数が少数を必ず凌駕するシステムはそもそも間違っているのではないか?
そんな警鐘を鳴らしてくれる良作です。
セル・ブルーレイにて