AZ

ゴースト・トロピックのAZのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.6
感想が難しい。静かでただある女性の夜の出来事を写しただけである。だが、そこから漂ってくる苦悩や切なさ。人間の温かさ。

ただ生きているだけなのに、なんでこんなにも苦しいのか。だけど、だからこそ生きることは不思議で面白い。その中で出会う人々によって前向きに生きていける。

----------

前提として、日本人がこの映画を見た時にしっかりとこの映画が伝えたいことを理解するのは難しいと思う。ヨーロッパという地域におけるベルギーという国をしっかりと認識できているとは思えないから。ヨーロッパの縮図と言われてもわからない。なので監督の意図を汲み取るのは難しいかもしれない。だが、感じたものはある。

贅沢もせずただ生きるだけなのになぜこんなにも苦しいのか。だが、そういった思いを抱える人々が多くいるから、生きていける。同じ思いや経験を持つ人々と出会うことで孤独感が薄れていく。

特に夜中を生きている人達は何かしら抱えている場合が多い。多くの人々が眠りにつく中、静まり返った街。独特の空気感は自分自身を反芻する時間を与える。

社会を生きる人間というよりは、森の中の動物達を観察しているような感覚。

そんな空間で出会う人。その姿からこの国がどういう国なのかを静かに感じさせた。

----------

ただただその空気を捉えた映画。こういう系の映画は好きだし評価されるのもわかる。

だが、いかんせん自分は日本に生きる日本人。移民もほぼいない。日本の夜中はまた違った雰囲気。労働時間が長いことで有名なぐらいなので、夜中も明るく(特に東京)、そこまで特別な空気感がない。むしろ夜の街は嫌な雰囲気すら漂う場合もある。

ヨーロッパ、ベルギーの独特の空気感。意識が遠のくような浮遊感が漂う世界捉えられ、素敵な映画だと思うが共感しきれずに終わってしまった。
AZ

AZ