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PlaybackのAZのレビュー・感想・評価

Playback(2012年製作の映画)
3.8
再生される過去と現在は、彼自身を再生させ未来へと進ませる。
正直ノスタルジーに浸っている人は嫌い。過去に依存し今を生きているように見えないから。だが、ときには過去を反芻し自分の位置を確かめることは必要。そうして自分の進むべき道、方向を確かめることで止まってしまった自分を前に進めることができる。

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青春時代を大人のまま演じさせるという見せ方。潔い演出。

最初は違和感を感じたが、慣れてくると面白く印象的なものになっていく。そして、その中で1人だけ不思議な存在が目立ち始める。他の人物たちが大人のまま学生になっているのに、1人だけ若い姿でそこにいる。

これはどういう意味だろうと思いながら(俳優の都合かとすら思った)見ていくと、主人公と彼だけどこか意味深な表情をしている。そして再生される現在。そこに彼はいない。

つまり彼は存在していない友だったということ。この部分は断言して良いのかわからないが、すでになくなってしまった友の可能性は高い。むしろそうじゃなきゃよくわからない存在になってしまう。時間が止まってしまったかつて存在した友が、無意識的に今の自分と重なり意識の中に浮かび上がってきたのだろう。

彼の話した昔話は誰も覚えていなかった。最後までその真実はわからない。だが、とても重要で大切なもののようにも感じる。記憶にないものを大切に感じる感覚が切なく、感傷的にさせられた。時間によっていつの間にか失われていくものがたくさんあると再認識させられた。そこには自分自身も含まれる。

失われた記憶や友に対する感情が、自分に投影され生きることに対して向き合う力を与えてくれる。自分が今なんのために生きているのかわからなくなったとき、自分の歩んできた道を省みることの重要性を改めて感じさせてくれる作品だった。

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モノクロにしたのは様々な理由や背景があると思うが、一つが時代感を感じさせない為だと思う。現在と過去の見え方がカラーだと同じに見えて変な感じがより出てしまうが、モノクロフィルムだと良い感じに時代感が消え、過去のストーリーは過去の時間として見える。

あとは引用。SF的なものを感じさせたのだが、車窓から見える映像、トンネルを効果的に使う演出は『惑星ソラリス』を思わせた。

仲が良いのはわかったが、それぞれの関係は曖昧なままだったように思う。その曖昧さの中に曖昧な存在の友を介入させるのが良く、絶妙なバランスで関係が作られていた。

会話や表情、言葉から読み取り感じさせる余白のある映画。こういうのやっぱり好き。
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