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もしも徳川家康が総理大臣になったらのTSのレビュー・感想・評価

1.7
【ただの時代劇コスプレごっこ】33点
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監督:武内英樹
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:110分
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 2024年劇場鑑賞19本目。
 公開初週に観ようかと思っていたのですが、中々評判が悪かったのでついつい後回ししてしまいました。そして、今回都合の良い上映時間がありましたので観に行ったものの、確かに評価が低い理由がわかりましたね。いろいろあるのですが、結局のところ最初から最後まで詰めすぎて、この作品の魅力をほとんどいかせていないというところが致命的でしょう。家康の演説に尺をとるくらいなら、多くの読者が唸らされた太閤給付金のくだりをもっと丁寧に描くべきだったでしょう。あくまで、今作はコロナ禍でどうしようもなかった日本が、もし偉人に頼るならば、という設定がウケてヒットした作品です。そこを忘れて、安い時代劇のような芝居、展開を繰り広げてもなんにも面白くないのです。そのあたりをしっかり観たければ、我々はもっと重厚な時代劇を鑑賞するはずです。

 あらすじは省略。この作品を観にくる方は、どんな設定の映画か大体把握されていることでしょう。ちなみに僕は、コミックは読んでいて、原作の小説は未読となっていますが、後半の展開がかなり微妙だったので気になり小説を購入してしまった次第です。ただ、コミックはかなり面白かったので、合わせて原作も面白いはずです。そんな期待の中、今作が登場したわけですが、どうも鑑賞者の期待に応えた作品ととても言えないものでありました。まず、作者から許可は取っていると思われますが、なぜ文部科学大臣を菅原道真から紫式部に、法務大臣を藤原頼長から聖徳太子に変更されているのでしょうか。これは恐らく、後者はあまり有名でないから、それならば日本人が全員知っている聖徳太子を、としたのでしょう。10人全員の話を聞けるという観たくもないパフォーマンスもお披露目されてうんざりです。また、前者はそこそこ有名であるものの、男女のバランスを考えたのか、はたまた今やっている大河ドラマに影響されてか、紫式部が出てくることに。なんだろう、鑑賞者に如何にウケるか、ということしか考えていない制作側の様子が伺え落胆します。作者が文部科学大臣を菅原道真、法務大臣を藤原頼長にしたのには大きな理由があるのです。それをどの程度交渉したのかは知りませんが、鑑賞者がよく知っていてウケも良いだろう、という理由だけで人選変更があるならばたまったものではありません。実際、この2人の活躍はかなりイマイチであり、わざわざ変えた必要あったか?と思えてしまいます。

 また、節々に出てくるギャグが全て寒い。全く笑えません。これも、鑑賞者がクスッと笑ってくれると思ってやってるのでしょうか。ひろゆきのモノマネやら、今でしょやら、いらんでしょう。一番いらないのは秀吉のダンス。観ているこっちが恥ずかしくなってしまうくらいです。と、真面目な話のはずなのに、こんなノリがとことん続くから鑑賞者は困惑してしまいます。というか、確かにジャケットを見たらややコメディ要素がある映画と予想できますが、鑑賞者が一番観たいのは「この苦難を過去の偉人ならばどういう策で乗り越えるのか」という箇所なので、ある程度真面目な話でもあるということも予想できるのです。で、世間が偉人たちを評価する最初の大胆な政策こそが「太閤給付金」なのです。これはコミック版を読んで唸らされました。無理だろう、と思いながらもさまざまな偉人達が目標達成のために動く。現代の観点からみればブラックではあるものの、国難を乗り越えるためにはそんな甘いこともいってられないのでしょう。今作は現代世界の甘さについても度々触れているのですが、そのあたりもわかってくる秀逸なエピソードです。僕はこのエピソードに半分くらい使っても良かったと思っていたのですが、蓋を開けると冒頭あたりですぐ終わってしまいます。しまいには、手のひらを返したように国民が偉人たちを認めるシーンが連発し、徹子の部屋ならぬ政子の部屋なんてまで登場して観てられない。

 こんな調子なので、原作が最も伝えたいであろう家康の演説も、最早ただの老人の説教にしか聞こえなくて残念極まりない。ただただ有名な偉人を集めてコスプレごっこをしているだけの映画にしか見えませんでした。原作が良いだけに非常にもったいない映画化。願わくば、作り直しをしてもらいたいくらいですね。。
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