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テルマ&ルイーズ 4Kのスズキのレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ 4K(1991年製作の映画)
4.4
これは素晴らしいですね。

早々にピストルを登場させラストで死ななくてはいけない展開にした上で、どういう死に方にするんだろうと思ってたら、考えうる限りで最も清々しく終わった。記憶に残るラスト。

賞味期限の切れたアメリカンニューシネマをどう再生させるかを考えて作られた気がするけどどうなんだろ。それも単純に女性2人もので終わらず、関係性の変化を描くのもうまい。

今だったら当たり前だけど、こんな時代(1991年公開だから33年前)から男性に虐げられる女性を描いた作品があったんだな。確かに今こそ4K公開する意味があるわ。ていうか『最後の決闘裁判』を語る際にこの映画は観ておくべきだったんだろうな。リドスコへの好感度が確実にアップした。

とにかく出てくる男性がクズ過ぎるんだけど、特にトラック運転手はもうギャグのレベルに達していて笑ってしまった。しかもお前は死なないんかい。どんな無残な死に方するのか期待してしまったよ。

土埃が映えていて、めっちゃ映像向きだなと。車が引き返すだけで迫力が出る。あとロードームービーならではの風景の抜けの良さ。高い建物が建ってなくて、遮られてない土地をオープンカーで走ることで自由を感じられる。

単純な復讐ものではなく、仕方の無い殺人から始まり、ルイーズの過去を匂わせるのがうまい。
展開は行き当たりばったりなんだけど、全ての犯罪が男性のせいで起こってる展開は上手かった。まあ犯罪は犯罪なんだけど。描きたいテーマが明確。

テルマが馬鹿すぎるからこそ物語が推進してる部分はなきにしもあらずあらずだけど。

あと高いところから水を撒く車とか、ガソリンスタンドで激マッチョがダンベルで筋トレしてる奥で火事が起きてる謎シーンとか意味がわからない謎要素も面白かった。あれなんなんだ。

車のトランクに警官が閉じ込められるんだけど、黒人の自転車乗りが来て、でも助けるではなく副流煙を空気穴から入れるシーンも良かった。描きたいものが明確。

ハーヴェイ・カイテルのおかげで、単純な男対女の構造を避けているところもいい。
ルイーズに感するテキサスの出来事をわざわざはっきりと描かないところも品の良さを感じる。充分理解できるし。

時間が経ってあのラストを考えるとなんかファンタジーだなとも思うけど、見終わった直後は興奮したのは事実。

ストーリー自体は単純なので、もう少しだけ短かったら完璧だったな。

出来事自体は雪だるま式に悲惨な方向へ行くのにずっと明るいのも良かった。アメリカっぽい明るさ。

音楽がハンス・ジマーなんだけど、今と違って普通のヒットソングっぽいのとか、時々ヴァンゲリスぽかった。

男性に酷いことをされた過去を持つウエイトレスのルイーズがモラハラ夫に支配されるテルマを旅行に誘い、数々のトラブルの果てに自由へダイブする話。
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