久しぶりの自分の中でのヒット作。
何の前知識も入れずにアメリカ本土での戦争映画か気になるなぁと思ってみたら矢口史靖監督もビックリの戦場カメラマンお仕事ムービーだった。
最初にこれだけは伝えたい。
心臓弱い人は音響の良い映画館で観てはいけない
心臓強い人は音響の良い映画館で観て欲しい
この映画が持つ魅力のひとつが音響で、「戦争は容赦無く突然人の命が奪われるのが当たり前」というのを理解させるが如く、アクション映画やFPSゲームで聞く銃声はオモチャなんだとばかりに轟音を響かせ戦争の恐怖を平和ボケした我々に教え込んでくれる。
私はBestiaのスクリーンで鑑賞し上映開始から暫くして、不意に訪れる戦場のシーンで座席からケツが浮き上がる程びびった。こんな体験はなかなかない。
映画を鑑賞していて、自分に銃口が向いているわけでは無いと分かっているのに「撃たないでくれ」と思わせる迫力がこの映画にはある。PTSDになる人が出そうな凄味を感じる。
シナリオは「なぜアメリカがこうなったか」の説明は完全にすっ飛ばされるし、かつてのシビルウォーのように南北ではなく東西に分かれて戦っているそれぞれの勢力図も何となくでしか理解できないようになっている。ベテランの戦場カメラマンと記者の中に、どう見ても足手纏いにしかならなそうな危機感の足りない新人フォトグラファーの視点を足して、「戦場カメラマンの厳しすぎるOJT」が疑似体験できるようになっている。
物語終盤に向かうにあたって彼女の成長の描き方がやや物足りないが、それぞれの登場人術が果たすべき役割はしっかりと果たした完成度の高い脚本だと思う。
キルスティン・ダンストは終始眉間に皺を寄せてベテラン戦場カメラマンとしての貫禄と説得力のある風貌に。スパイダーマンでMJを演じていた頃から顔が殆ど変わらない。あの頃は老け過ぎていて女子高生役にはとても見えなかったが、反対に今は強さと美しさを感じる魅力的な女優だと思う。
中々の良作だった。