ゆきゆき

シビル・ウォー アメリカ最後の日のゆきゆきのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

「有り得るかもしれない近未来」という、ディストピアSFにありがちな感想を切実に思ってしまう一作。劇中で終始鳴り響く、乾いた銃声の音がずっと耳に残る。アメリカ本土で戦争が日常となってしまった恐ろしさが伝わってきます。

主人公のリーが抱える喪失感。戦場カメラマンとして海外の戦争の実情を国内へ報道してきたのに、結局はアメリカは戦場となってしまった。ワシントンD.Cへの危険な旅は、ジャーナリストとしてこの事態を止められなかった彼女らの贖罪も混じっているのかもしれない。

ジェシー・プレモンス演じるの兵士の行動には戦慄を覚える。アメリカ的な人物を良しとし、中国人は問答無用で射殺する。このような一方的な差別や虐殺は世界中で起きていること。兵士は彼なりの論理で「アメリカを守るため」に行動した結果なのだろうが、その結果があの内戦状態なのである。他国に向けた敵意は最終的に同胞にも向けられていく。

映画のラスト、大統領暗殺の瞬間を写真に捉えたジェシー。この写真が後々勝者の歴史を補強する物として使われていくことは、想像に難くない。そのことについてジェシーは誇りとして体勢側に寄るのか、それとも批判的な立場に自らを置くのか。リーの信念は、ジェシーに引き継がれたと信じたい。

ショッキングなシーンも多く終始絶望的な雰囲気が漂うが、随所で流れる音楽のおかげで軽やかなロードムービーとしても見れてしまう。Silver Apples、Suicide、De La Soulといった選曲は絶妙でした。
ゆきゆき

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