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水深ゼロメートルからのJPのレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
3.9
▼JKの会話劇の解像度の高さ!

映画化のためにおそらくブラッシュアップされたとはいえ、本当に女子高生が描いたの?!と驚く、脚本の完成度の高さ。また、当時現役JKが書いたからこその、彼女たちの雑談のリアリティがえぐい。その雑談が、気づけばとんでもない鋭さをもって性差の問題に切り込んでくる。えぐい。

▼舞台装置として完璧な、四角くて大きな穴!

そもそも、この水の無いプールという四角くて大きな穴が、舞台装置として良すぎる。「陽」の男子野球部からは見えず、彼らが撒き散らす砂が少しずつ積もるという構造。中盤ではついにボールまで飛んでくる。「陽」とされる男子たちがイキイキとすればするほど、少しずつ被害を被る「陰」の女子たち、という構造。よくできてるわ…。


▼魂を揺さぶるラストカットは必見!

ずっと日照りと砂と格闘し、水を飲む場面ひとつなかった今作で、全てを洗い流すかのように降る雨。恵みの雨なのか、それとも喜びと悲しみの入り混じった涙なのか。
せっかく集めた砂も全て流れ、彼女たちがディスカッションをしたかけがえのない時間だけが残る。ずぶ濡れになりながら、「私のままで戦う」ことを決意し、うちわを構え、阿波踊り(おそらく男踊り)を始めるあのラストカットよ!痺れる…!

そこに間髪入れずに流れ込んでくるエレキギターの荒々しいノイズのようなハーモニクス!スカート澤部の優しい歌い出し。息をするのも忘れてあのラストカットを見守っていたことに気づき、我にかえる。そういえばここまで劇伴もほとんどかかっていなかった。急に降り出した雨のように、突然音楽の洪水に襲われるエンドロールまで、最高!


▼こんな人におすすめ!

・「アルプススタンドのはしの方」が好きな人
・全徳島県民
・演劇が好きな中高生
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