ゴリアテの憂鬱

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争のゴリアテの憂鬱のレビュー・感想・評価

4.2
本作の原題は、『決して存在することのない「奇妙な戦争」の予告編』

“奇妙な戦争”は、生前のゴダールが企画していた構想でしたが、その映画は完成することはなくゴダールは安楽死を選びました。
長編映画の完成を諦めたゴダールでしたが、その代わりに約20分の短編映画となる本作を遺しました。

そして、それが私達が決して観ることのできない映画の予告編だなんて、、
ゴダール、最後までカマしてくれます。


冒頭、アーサー・ペンの『奇跡の人』の抜粋写真に、手書きで「映画『奇妙な戦争』の予告編」と書かれたコラージュの静止画から映画は始まります。
しかし、無音で続くその静止画は長い時間次のカットに進みません。
僕は心の中で笑けてきました。

ファスト映画とか“タイパ”とか言う言葉まで生まれるような、日々時間に追われて忙しすぎる現代に向けて、ゴダールはたった一枚の静止画だけで痛烈な批判をしています。
もう、言葉さえも必要ない。

その後も、自身が一度破壊した映画の枠組みをさらに解体して、さらに自由に再構築したような斬新過ぎる構成のオンパレードで、これは計算し尽くされた超難解なものなのか、それともその大部分は人生の最終盤を迎えたゴダールの気まぐれによるものなのか、浅学の僕には解りかねました。。

でも、最後のゴダールの勇姿を映画館で観ることができて良かったです。