ナガエ

アンデッド/愛しき者の不在のナガエのレビュー・感想・評価

-
割と期待していただけに、全然合わなくて残念だった。僕には、何が面白いのか全然理解できない。

本作では、「死んだはずの人が生き返って戻って来る」みたいな要素がメインの描写になるわけなんだけど、まず、その展開にたどり着くまでが長い。3組ぐらいの登場人物たちの、異変が起こる前の日常を描き出しているわけだけど、ここが退屈だったんだよなぁ。もちろん、物語の構成としては、「異変が起こる前」を描くことで、その前後の変化を描き出すってことだろうし、だから必要な要素だということは理解できる。ただ、面白くない。

本作は、意図的にそうしているんだろうけど、とにかく会話がメチャクチャ少なくて、だから僕には正直、登場人物たちの関係性もしばらくよく分からなかったりした。っていうか結局最後まで、老女2人の関係性は分からなかったなぁ(前半特に、つまらなくてウトウトしちゃったからってのもあるんだけど)。

で、関係性がよく分からないから、やり取りもよく分からず、だから登場人物たちの行動の意味とか意図が分からないことがとても多かった。まあ、とにかく僕には絶望的に合わなかったというわけだ。

あと感じたのは、「やっぱり火葬しない国の物語って感じするなぁ」と思う。調べると、舞台となるノルウェーでは火葬も増え始めているそうだが、やはりキリスト教の国だから土葬もまだ多いらしい。「死後に復活して天国に行く」という発想から、肉体を残しておかなければならないからだ。そして、そういう世界観だからこそ、ゾンビなんかも含め「死んだ人間が肉体ごと蘇る」みたいな物語が生まれるんだろうな、と。

一方日本の場合は昔から火葬がメインのはずなので、死者は「幽霊」という実体の無い形で現れる。この違いはやはり、物語を受け取る上でも影響を及ぼすだろうなと思う。

日本の場合はやはり、遺体を火葬していることもあり、「肉体がある状態で戻ってきてほしい」みたいなことはあまり考えないように思う(どうだろう?)。よくあるのは、「夢に出てきてほしい」みたいな感じだろうか。「何らかの形で自分にアプローチしてきてくれたら嬉しいけど、肉体を伴ってという希望はない」という感覚が普通ではないかと思う。

一方、「死後復活して天国に行ける」と考えるキリスト教圏では、「肉体を伴って戻ってくること」がやはり望まれるということなんじゃないだろうか。だから本作のような、「死んだはずの人間が肉体を伴って戻って来る」みたいな物語を受け入れる余地がある気がする。いや、積極的に望んでいる、と考えるべきだろうか。

本作は副題にある通り、結局「愛しき者の不在」を突きつけられる展開になっていくため、「キリスト教圏の人たちの希望を打ち砕く物語」と言えるかもしれないが、日本人の我々には、そもそもキリスト教圏の人が抱いているような「希望」が無いので、「うーん、それで?」という感じになってしまうような気がする。

そんなわけで、ちょっと苦手な作品だったなぁ。睡魔と闘うのが大変だった。
ナガエ

ナガエ