こなつ

サンザシの樹の下でのこなつのレビュー・感想・評価

サンザシの樹の下で(2010年製作の映画)
3.8
2010年中国映画。原作は中国で3000万部突破のベストセラーとなった同名小説。監督は「初恋のきた道」「妻への家路」のチャン・イーモウ。原作者の友人が体験した実話に基づいた若い男女の純愛を綴ったラブストーリー。

「ソウルメイト」「少年の君」のチョン・ドンユイがオーディションで掴んだ映画デビュー作。最近「マカオのカジノ帝王」故スタンレー・ホー氏の娘と結婚して話題になったイケメン中国俳優のショーン・ドウが共演。彼にとっても映画デビュー作だった。

1970年代初頭の中国が舞台。毛沢東主導の国策で農村学習に派遣された女子高生ジンチュウ(チョン・ドンユイ)は、住み込み先の家で地質調査隊の明るく誠実な青年スン(ショーン・ドウ)と出会う。2人は次第に惹かれひそかに愛を育んでいく。しかし、父親が「反革命分子」と見なされ矯正施設に入れられた上、病弱な母親が迫害を受けているジンチュウにとって、それは許されない恋だった。やがて引き離される2人だったがそれでも想い続けていたある日、スンが白血病で入院したという知らせが届く。

文化大革命に翻弄された若い2人の儚い純愛を瑞々しく描いている作品。18歳のチョン・ドンユイがピュアな魅力で、世間ずれしていない女子高生を熱演。22歳のショーン・ドウは、年齢よりも落ち着いた身のこなし、家族でカナダに移住して20歳まで生活していただけあって、あの時代の中国の青年を演じているにはちょっと洗練し過ぎているほどのイケメン俳優、一途にジンチュウを愛する心優しい青年を好演。
初恋の初々しさ、ぎこちなさ、どこにでも居そうな2人の物語だったが、辛い運命が待っていた。文化大革命時代の中国の時代背景や人々の暮らしぶり、三峡ダムに沈んだ村とそこにあったサンザシの樹、農村の美しさなどの描写が興味深かった。

やがて訪れる悲しい別れ、最後まで病気を隠してジンチュウを愛し続けたスンの心に胸が打たれた。
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