ペドロ・コスタ監督の3作目。「ヴァンダの部屋」(2000)「コロッサル・ユース」(2006)へと続くリスボンのスラム街”フォンタイーニャス地区”映画の第1作目。ヴァンダなど同地区の住人を俳優として起用。
赤ん坊を産んだ娘ティナはリスボンのスラム街に戻ってくるが、夫は赤ん坊を連れて家を出て行ってしまう。夫は物乞い中に看護婦のエドゥアルダと知り合い彼女の家に居候するようになる。ティナを気にかける隣人の家政婦(ヴァンダ)や赤ん坊を預かる娼婦(イネス・デ・メディロス)など、若い夫婦と底辺の女性たちの姿を描く。。。
前二作に比べてずっと観やすかった。赤ん坊というマクガフィンの存在と、登場人物たちの間に”共感”が感じられたからだと思う。
ポルトガルの移民が集まるスラム街の空気がとてもリアルに伝わってきて興味深かった。もともと街の映画が好きということもあるからか、ロケーションも風景の切り取り方も魅力的だった。登場人物たちも普段の外国映画で見慣れている白人系とは違いエキゾチックで新鮮だった。素人俳優が多いことも効いている。ドキュメンタリータッチがうまく取り入れられた劇映画だったと思う。
コスタ監督の初期三作はすべてスタイルが違ったが、その変化には必然があったように思える。
「血」(1989) 監督が学んできた映画史と映画手法の実践
「溶岩の家」(1994) 映画手法の破壊とドキュメンタリーへの接近
「骨」(1997) ドキュメンタリータッチの実践とライフワークの発見
そして次作「ヴァンダの部屋」(2000)では”ドキュメンタリータッチ”に限界を感じて完全ドキュメンタリーを作ることになる。
引き続きコスタ監督の後の作品群を順に観ていくのが楽しみ。本作は欠かせない起点であり、監督の作品を未見の人にとっては入門編に丁度良い一本だと思われる。