安部公房にハマって小説を読み漁っていた時期があり、「箱男ってあの箱男!?」とびっくりして再読してから観に行った。
小説はかなり複雑な構成なので、これを映像化するのか…?どうやって?と思ってたけど、なかなか上手くやったなぁという感じで面白い。語り手が複雑に入れ替わる様子とか、時系列の入れ替わりとか、起こっていることは実は書かれたことなのだとか、上手く映像で表現されている。
箱男が入ってるの、洗濯機の箱なのか……小説で冷蔵庫の箱に入る描写があったのでもっと背が高いイメージだったけど、見下ろせるくらいずんぐりしてて、中腰で移動するアクションはなんか可愛い。
浅野忠信の演技が特に良かった。
覗き窓と映画スクリーンのサイズ比が同じなのも良い。
以下気になった点。
近年、「見ること」の暴力性を題材にした映画をよく見ており(スマホカメラや個人でも行える動画配信が一般化した社会背景もあるだろう)、類似の題材の小説を映画化するということでどうかな?と思っていたけど、見ていて居心地が悪くなるような、観客を共犯に仕立て上げるような加害性はあまり感じず。小説では少年のシーンなど読んでて居た堪れなくなるようなシーンがあったが、そこまでの心を抉ってくるシーンはなかった。
箱男のテーマからして、「関心領域」とか「女神の継承」みたいな、鑑賞しているだけで居た堪れない気持ちになるような要素を期待してたのでちょっと残念。
それから、小説版はずーっと不潔さと臭いのイメージが漂っていたのだけれど(箱男自身はもちろん、海にあるシャワー室の汚そうな磯臭そうなイメージ、それから葉子と暮らすシーンの腐敗した生ゴミの山)、映画では「臭そう」さが感じられず。
「臭そうなもの、普通は避けて見ないことにしてるものを映画として強制的に見せられる」ってだけでもかなり前述の居た堪れなさがあると思うのだけどな。
あと、ラストは言葉で説明しすぎじゃない?そんなことは2時間も映画見ていればみんな気づいてるだろうし、「私は気づいてしまった、みんな偽物だったのだ……」であと無言でぶつ切りにして良かったと思う。ホラーのオチあるあるみたいな一言は蛇足感があり、惜しい。