しの

パレードのしののレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
2.4
死者への弔いを描いた作品だが、タイトルが示すように、むしろ祝祭感のある着地をみせていく。藤井組キャスト総集合の豪華さもそのテイストに寄与していた(Netflixに招待頂き試写にて鑑賞)。

しかし、なかなか厳しい作りだと言わざるを得ない。まず、「このキャラがこう言ったらこう返すのがお約束なんです」みたいなキャラづけ関係性づけが記号的で、これは少なくとも実写だと見るに堪えないと感じた。未練を抱えた死者たちが交流しているようで、実はほとんど各々の背景事情を説明し合ってるだけなので、折角の豪華キャストに何の感情も湧かず。

死者が生者の世界とどう断絶しているかという、映画史において何度も試みられてきた表現についても凡庸だ。あえてCGっぽい作りを避けたのは分かるが、にしても工夫がない。ベランダで呆然と立ち話してる画がシュール。もっと視線の交わらなさとか、ドキッとさせる何かがあればよかったのに。

あと映像について、一見きれいに撮られているようだけど、全体的には無策という感じがしてしまった。整理されたヒキの画をドリーで撮って……みたいな画があまりに多い。お得意のアスペクト比変更や、終盤の顔アップの繋ぎなど、色々と自由にやっているけど、やってる感しかないというか。

これまでの作品で見られたような、やりたいこと先行の説得力のなさと、『余命10年』のような露骨にエモーショナルな展開および劇伴のクドさが合体したような作品だった。途中、映画制作の場面で急にコミカルになるチグハグ感もよくわからない。感情に任せて撮ってしまったのではと思うほど。

映画が生者と死者をつなぐアイテムとなるのは良いけど、未だにあの人があのタイミングで都合よく『カサブランカ』を観ているという安易さとか、真面目に演技したあの子に対する周囲のリアクションとか、好ましくない描写が目立つ。踏ん切りのためにこんな贅沢な座組になること自体はすごかった。
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