回想シーンでご飯3杯いける

パレードの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
4.0
“想いを残した者たちがとどまる世界”

ゴースト物や天使が登場する映画を何本か観ていたタイミングで、また新たな秀作に出会えるとは!これは予想外の収穫だった。

ここ最近の藤井道人と言えば、社会派作品を撮る監督のイメージが強いけど、僕は彼が稀に作る寓話的な作品の方が好きなのだ。今回の「パレード」はその系譜にあり、彼のフィルモグラフィーで言えば「青の帰り道」や「宇宙でいちばんあかるい屋根」に近い。自身のオリジナル脚本で、更に映画作りに関するエピソードも入ってくるので、パーソナルな部分を軸にした集大成的な作品と言えるのではないだろうか。

舞台となる街の名前は語られない。「浜辺に打ち上げられた」という台詞はあるが、「津波」と特定されていなかったはずだ。敢えてリアリティを目指さず、普遍的な寓話として構成される世界観。

息子と離ればなれになってしまった母親を演じる長澤まさみを筆頭に、主役級の役者が各々“想いを残した者"を演じる。このメンツも言わば藤井ファミリーの集大成という感じで、ちょっとズルいと感じるほど豪華。さすがに見応えがある。

お涙頂戴映画になりそうなところを、リリー・フランキーと寺島しのぶのベテラン勢が、程好いユーモアを持ち込んで、暖かい空気を作り出す。現世へのノスタルジーだけに終わらない展開も良い。