回想シーンでご飯3杯いける

PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.5
1933年、京城(現在のソウル)。日本統治時代の朝鮮総督府を舞台に、抗日スパイ「ユリョン」(幽霊)を炙り出す為の心理戦を中心に描いている。

当時の様子を再現したロケ地や舞台美術がとにかく凄い。ポスター同様に濃い赤と黒を中心に、所謂リアリティから敢えて距離を置いて、鮮烈な印象を残すシーンが満載だ。

この世界観に合わせるかのように、クールで強い女性を演じるイ・ハニとパク・ソダムにも注目だ。各々「エクストリーム・ジョブ」や「パラサイト」等の現代劇に出ていた印象が強いが、こうして歴史上の舞台設定の中でも、新たな魅力を打ち出してくるのが、いかにも韓国らしい。俳優個人のキャラクター性より、役をこなす技術が重視されるのだろう。

朝鮮総督府の成り立ちや、それが朝鮮半島に於いてどのような存在であったのか等の背景に殆ど触れていないのは、韓国人にとって当たり前の共通認識だからなのだろうが、簡単でも良いから冒頭で説明するパートがあれば良かったのにと思う。