曇天

めまいの曇天のレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
4.0
ずっと気になっていたけど『めまい』というタイトルからとてもあんな話は想像できない。ラストはすごすぎて頭を抱えた、まさに発狂ものの映画。

今までいろんな恐怖の種類を体験してきたけど監督の扱う恐怖はすごく原初的、大事なものを一瞬で失う恐怖だ。大雑把に言って前半は不倫メロドラマ、後半は元カノを忘れられない男のメロドラマなのに、クライマックスで急速にサイコサスペンスが展開してあのラストである…。多分観客にトラウマを植え付けたいんだろう。

この映画がちょっとヤバイのは、高所恐怖症の男が考えうる「自分が高所から落ちるより怖いこと」が中盤に起きてしまうのに、それをもう一度追体験してしまうところにある。トラウマを持つ主人公がさらにトラウマを増やして一度は廃人になってしまい、立ち直った矢先にトラウマの追体験。弱った男に何度も追い打ちをかけてそこを見せ場にもしている。悪趣味極まりない。
でもラストで彼はトラウマを克服していたわけで、ラストの後彼がどんな精神状態になってしまうか想像もできないところがまた恐ろしい。鬱ではなくなり、逆に高い所に上りたくて仕方のない躁状態が止まらなくなるんじゃないか。下を見下ろし続けるスコティの無表情がたまらない。

ヒッチコックでは最近になって『裏窓』、『ロープ』、『知りすぎていた男』を観たけどロープが好きかな。知りすぎていた男は脚本がいちいち上手くて感心した。
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